スポンサーサイト

タグ:
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
ALL-2ch
1001: 以下、名無しにかわりましてゆる速がお送りします 2014/07/24(木) 21:43:32.94 ID:yuruyuri0

綾乃「歳納京子と結ばれる為の六つの試練」

【ゆるゆりSS】綾乃「歳納京子と結ばれる為の六つの試練」


1: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 15:53:40.04 ID:+CTp9RkZo
千歳「綾乃ちゃん、どしたん?改まって相談なんて…」

放課後の生徒会室、私と二人きりになった千歳は、不思議そうな顔で訊ねてきた。
今日やる分の仕事は速めに終わったので、大室さんと古谷さん、そして会長はもう帰ってしまっている。

綾乃「あのね千歳、その…」

決心はついた筈なのに、いざ相談しようと思うとなかなか切り出せない。
そんな弱虫な自分を奮い立たせ、千歳の目をじっと見据える。

綾乃「私、歳納京子に自分の気持ちを伝えようと思うの…」

千歳「…!!」



ゆるゆりSSデータベース
2: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:01:23.31 ID:+CTp9RkZo
綾乃「千歳にはきっとバレバレだったと思うけど、私、歳納京子の事が好き。大好きなの」

あれだけウジウジしていたにも関わらず、いざ話し出すと、言葉が次々と溢れてくる。

綾乃「いつも素直になれなくて…、本当は仲良くしたいのに、正反対の行動ばっかり取っちゃって…」

千歳「綾乃ちゃん…」

綾乃「千歳はそんな私の事、いつも応援してくれた。だから、千歳には伝えておきたいなって思って」

弱々しく語る私を、千歳はいつもと同じように、ニコニコとした顔で見守ってくれる。

千歳「綾乃ちゃんならきっと大丈夫やで。だって、こんなに一途に歳納さんの事想っとるんやもん」

綾乃「千歳…」




3: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:07:14.76 ID:+CTp9RkZo
千歳「綾乃ちゃん、頑張ってな!」

綾乃「うん、ありがとう…。私、千歳と友達で本当によかった…」

千歳「うちもやでー、綾乃ちゃん」

それにしても…。

綾乃「今回は鼻血出さないのね」

千歳「いやいや、綾乃ちゃんの一大決心やもん。うちかてちゃんと…」

ドクドク

綾乃「うわっ…!」

千歳「あはは、時間差で出てきてもうたな…」ドクドク

綾乃「全くもう…」クスッ



4: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:08:28.88 ID:+CTp9RkZo
~翌日・ごらく部~

京子「あはは、やっぱりあかりは影が薄いなー」ケラケラ

あかり「もー、ひどいよ京子ちゃん!」アッカリーン

綾乃「…」

いつものように楽しそうに笑う歳納京子の声を、私はごらく部の部室の扉越しに聞いていた。
どうしよう、やっぱり勇気が出ない…。

結衣「そろそろ暗くなってきたな。今日はもう帰ろうか」

ちなつ「そうですね、結衣センパイ」

早く行かないと、歳納京子たちが帰っちゃう…。

綾乃(千歳…)

昨日の千歳の言葉を思い出し、私は思い切って扉を開ける。



5: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:11:18.81 ID:+CTp9RkZo
バーン!!!

綾乃「と、とととと歳納京子ーーーー!!」

京子「ふえ?あやの?」

結衣「どうしたの?また京子がプリント出し忘れたとか?」

京子「いや、今日はちゃんと出したはずなんだけど…」

綾乃「ええと、その…///」

頑張りなさい杉浦綾乃!千歳の為にも!

綾乃「プリントとかじゃ、なくて…。話が…あるの…」

京子「え…?」



6: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:12:01.04 ID:+CTp9RkZo
綾乃「あっ、あなたにどうしても話したい事があるの!!だから…」

綾乃「生徒会室に来て…!待ってるから…」

京子「ちょ、ちょっとあやの…!」

それだけ何とか伝えると、私は逃げるようにごらく部から去る。
船見さんとかに変に思われちゃったかな…。
でも今の私に、あの場であれ以上の事を言える余裕なんてない。
こんな事で、歳納京子に告白なんて出来るのだろうか…。

綾乃「ふぅ…」

生徒会室に戻り、椅子に腰掛ける。
大室さん、古谷さん、会長だけでなく、今日は千歳にも先に帰ってもらった。
後はここで、歳納京子が来るのを待つだけ。



7: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:13:23.63 ID:+CTp9RkZo
~生徒会室~

10分後、歳納京子がやって来た。

京子「やっほー、あやのー♪」

綾乃「ごっ、ごめんなさい、急に呼び出したりして…。その…、ごらく部の皆は?」

京子「あー、先に帰ってていいよって言ったんだけど、部室で待ってるって」

綾乃「そう…」

だとしたら、早めにすませないと…。

京子「で、綾乃。話って…?」

綾乃「ええと…///」



8: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:14:39.44 ID:+CTp9RkZo
歳納京子が無邪気な瞳で私の事を見つめてくる。
これから私に告白されるなんてきっと思ってないであろう、その純粋な眼差しを見ていると、決心が揺らぐ。
やっぱり告白なんて止めてしまおうか。
そうすれば、少なくとも今までの関係は壊さずにすむ。
歳納京子との距離は近づかないかもしれないけど、それでも決して遠ざかる事は無い。

京子「綾乃、もしかして何か悩んでる…?」

綾乃「え…?」

京子「だって綾乃、凄く思いつめた顔してる」

綾乃「…!!」

歳納京子はいつだってそうだ。
自由奔放に生きているように見えて、的確なタイミングで私の心に響く言葉をくれる。
だから、好きになったのかもしれない…。



9: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:19:12.95 ID:+CTp9RkZo
綾乃「あのね、歳納京子…」

だからこそ、やっぱりこの想いは伝えなくちゃ。

綾乃「私、あなたの事が…」

応援してくれた、千歳の為にも。

綾乃「あなたの事が好きなの…っ!ずっと前から…!!」

京子「…!!」

言った。
言ってしまった。
ついに言ってしまった!



10: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:20:02.68 ID:+CTp9RkZo
返事を早く聞きたい反面、歳納京子の反応を見るのが恐いという気持ちもあり、私はとっさに目を閉じてしまう。

綾乃「…」

どれくらいの間そうしていただろうか、ふと目を開けると、いつもと変わらない表情で歳納京子が微笑んでいた。

京子「えっと…。私も綾乃の事好きだよ♪」

綾乃「歳納京子…」

あまりにいつも通りなその表情に、私は悟ってしまった。
ああ、私の想い、ちゃんと伝わってないんだなって…。



12: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:22:09.98 ID:+CTp9RkZo

綾乃「あのね、歳納京子。『好き』っていうのはそういう事じゃなくて…」

彼女はきっと、友達としての『好き』だと勘違いしている。

綾乃「あなたの事、女の子としてというか…、その…」

京子「というと…?」

綾乃「だから…、その…、恋人として好きなのっ!あなたと恋人同士になりたいのよっ!!」

京子「…」

綾乃「ごめんなさい。急にこんな事言われても困るわよね。でも私…」

京子「綾乃!」



13: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:23:43.92 ID:+CTp9RkZo
綾乃「ふぇ…?」

京子「ええとぉー、だからさぁ、さっきも言ったじゃん。私も好きだって…」

綾乃「え?」

京子「さっきの返事はぁ…、私もそういう意味で言ったんだよ…///」

綾乃「それって…」

京子「だから…、私も綾乃の事、そういう意味で『好き」だって返事したつもりだったんだけど…」

―――
――


ズキッ…!

綾乃「え…?」



14: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:25:34.20 ID:+CTp9RkZo
その瞬間、私の頭に強烈な痛みが走った。

綾乃(なにこれ…?どうして急に…)

あまりの激痛に、私はその場に立っていられなくなる。

京子「えっ、ちょっと綾乃!?どうしたの…?」

ドサリと床に崩れ落ち、私の意識はそのまま真っ逆さまに墜ちていく。

京子「あやのっ…!あやのぉ!!」

綾乃(ごめんなさい歳納京子…。せっかく返事してくれたのに)

薄れゆく意識の中、歳納京子の今にも泣き出しそうな表情が頭から離れなかった。



15: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:27:33.15 ID:+CTp9RkZo
―――
――

後悔があった。

ただ一つの後悔が。

それは、泣いている彼女に声をかけられなかった事。

手を差し伸べてあげられなかった事。

守って…、あげられなかった事。

あそこで一人、うずくまって泣いているのは歳納京子。

私は、そんな彼女を救えなかった事をただ悔やんでいた。



16: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:31:46.77 ID:+CTp9RkZo
…。

綾乃「う~ん…」

目を覚ますと、側に歳納京子の姿が無かった。
それだけではない、辺りを見回してみると、どうもここは生徒会室では無いようだ。

綾乃「ここは一体…?」

??『目が覚めましたか、杉浦綾乃』

綾乃「!?」

急に声がしたので、驚いてもう一度辺りを見回す。
だが、人影らしきものはどこにも見当たらなかった。

??『姿を探しても無駄です。ここに私の姿はありません。私は、貴方の頭の中に直接語りかけているのです』

綾乃「あなた、何者…?」

??『私に名前はありません。貴方と、貴方の想い人の幸せ、そして成長を願う者…、とでも言っておきましょうか』



17: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:33:08.81 ID:+CTp9RkZo
一体この人が何を言っているのか、私にはさっぱり理解出来ない。
そんな事よりも、早く生徒会室に帰らないと…。

綾乃「ここは一体どこなの…?」

??『ここは、貴方とその友人数名の潜在意識の集合によって作られた世界です』

綾乃「潜在…意識?」

??『はい。『試練の間』とも呼んでもらいましょうか。貴方がここに連れてこられたのは、ここで幾つかの『試練』を受けてもらうためです』

綾乃「試練ってどういう事!?訳がわからないナイアガラよ!!!」

あまりにも現実味の無い話についていけず、思わずいつものダジャレが出てしまう。

??『貴方は、貴方の想い人に自分の想いを告げ、その相手もまた、それを受け入れようとしてくれた…』

??『その寸前でここへ連れて来られた訳です。ここまでは分かりますね?』

綾乃「ええ…」

??『ですが、残念ながら今のままでは二人が結ばれる事はありません』



18: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:34:53.69 ID:+CTp9RkZo
綾乃「どうしてっ…!?」

??『それは言えませんが、とにかく、貴方が想い人である『歳納京子』と結ばれるためには、ここで『六つの試練』を受ける必要があります。前を見てください』

声の主がそう言った瞬間、私の目の前に六つの扉が現れた。
その扉には、それぞれⅠからⅥまでの数字が書かれている。

??『貴方には今から、目の前にある扉に順番に入ってもらい、その中で試練を受けていただきます。『六つの試練』を全て突破出来たならば…』

綾乃「元の世界へ帰してもらえるって訳ね」

??『察しが早くて助かります』

綾乃「歳納京子と結ばれる為の六つの試練か…。まだ訳がわからないけど、とにかくやるしか無さそうね…」

??『はい。六つの扉の向こうにはそれぞれ『番人』と呼ばれる者がいるので、その者に従って試練を受けてもらう事になります』



20: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:37:34.67 ID:+CTp9RkZo
綾乃「じゃあまずは1番の扉からね!よし、生徒会副会長、杉浦綾乃!ファイトファイトファイファイビーチよ!!」

??『威勢の良いお方ですね。そんな貴方が幸せを掴める事を祈っていますよ。それと…』

綾乃「何かしら…?」

??『貴方のその、駄洒落というのでしょうか…?あまり面白くないので控えた方が良いかと…』

綾乃「余計なお世話よ!!!」

謎の声の主に罵声を浴びせ、私は力強く1番の扉を開けた。



21: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:40:16.95 ID:+CTp9RkZo
~第一の試練・あかりの章~

バーン!!

勢い良く扉を開けると、そこには私も知っている人物が立っていた。

あかり「杉浦先輩、待ってましたよぉ!」

綾乃「あ、赤座さん!?あなたが『番人』なの…?」

私の問いに、赤座さんがコクンと頷く。

あかり「杉浦先輩、ついに京子ちゃんに告白できたんですね。おめでとうございます!」

綾乃「あっ、ありがと…///」

あかり「でも、ごめんなさい杉浦先輩。その…」

綾乃「えっと…、『試練』だっけ?」

あかり「はい…」



22: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:41:35.64 ID:+CTp9RkZo
この世界でもやっぱり赤座さんは良い子なんだなって思った。

綾乃「それで、私は何をすればいいのかしら?」

あかり「えっと…。目を瞑ってもらっていいですかぁ?」

綾乃「ええ…」

言われたとおり、ギュッと目を閉じる。

あかり「それでは杉浦先輩。今からあなたを『第一の試練』へとお連れします」

赤座さん、いや、『番人』がそう言うと、私の体が物凄いスピードでどこか遠方へ飛ばされているような感覚になる。
そして同時に、頭の中に様々な光景が流れ込んできた。



23: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:42:45.06 ID:+CTp9RkZo
―――
――


~謎の空間~

チャイムの音が鳴る。

お昼休みの終わりを告げるチャイムの音だ・

同時に、いくつかの声が聞こえてくる。

それは、私にとって大切な女の子の泣き声。

そして、それを嘲笑う心無い人たちの声。

ここは中学校の教室。

周りの人たちから白い目で見られ、蔑まれ、歳納京子はずっと泣いている、一人ぼっちで…。

でも、今の私にはどうする事も出来ない。

そうこうしているうちに、船見さんが歳納京子の側へやって来る。

結衣『京子、行こう。これからは私がずっと側にいる』

京子『ゆい…』

船見さんが歳納京子の手を取り、教室から出て行く。

私は、そんな2人をただ黙って見ている事しか出来なかった。

今の私は、まだ弱いままだから。

だから、強くならなければいけない。その為の試練だ。

??『――――っ!―――――――!』

遥か彼方から聞こえてくる声で、私の意識は覚醒する。



24: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:44:00.03 ID:+CTp9RkZo
…。

??「あかりーっ!迎えに来たぞー!」

綾乃「うーん…」

外から誰かの声が聞こえ、私は目を覚ます。

綾乃「ってここどこぉ!?」

そこは知らない部屋だった。
狭いながらも可愛らしい内装で、小学生くらいの女の子の部屋だと思われる。

??「おーい、あかりぃー!」

誰かが呼んでいるので、とりあえず外に出る必要があるみたいだ。
どこの家かはわからないけれど、まずは洗面所に行こうと思い、1階へと降りていった。




25: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:45:15.40 ID:+CTp9RkZo
そこで鏡を見て、自分自身の姿に私は驚いた。

綾乃「これって…赤座さん!?」

鏡で自分の姿を見た瞬間、頭の中にたくさんの情報が入ってくる。
『赤座あかり』という人間が、どのように生き、どのように周囲の人々と接して来たか。
それらの情報が圧縮されたものが、急速に私の思考の中に入ってくる。
要するに…。

あかり(綾乃)「私は赤座さんになってしまった訳ね…」

鏡に移ったその姿は、先ほど会った赤座さんよりも少し幼く見えた。
まだ、小学校高学年くらいなのかもしれない。

??「あかりー!どうしたー!?」

あかり(綾乃)「待ってぇ~!今行くよぉ~!」

いざ声に出してみると、驚くほど自然に赤座さんの口調を真似する事が出来た。
これも『試練』だから…?



26: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:46:44.67 ID:+CTp9RkZo
身支度を整えて玄関へと向かう。
赤座さんの記憶が流れ込んできたおかげか、初めての家でも特に戸惑うことは無かった。

ガチャッ

玄関の扉を開けると、そこには2人の女の子が立っていた。

綾乃(もしかして、歳納京子と船見さん…!?)

結衣「あかりー、早くしないと遅刻するよー!」

黒い髪を後ろで結んだだけの髪型に、ボーイッシュな服装をした女の子。
この子が船見さんかな?ちょっとカッコイイかも…。

京子「…」

そして、船見さんの後ろで大人しく立っている、清楚な女の子。
髪の色や雰囲気からして、歳納京子に違いない。
それにしても、この頃の歳納京子って今と全然雰囲気が違って…

あかり(綾乃)「かわいい…」ボソッ

京子・結衣「えっ!?」



27: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:48:16.39 ID:+CTp9RkZo
あかり(綾乃)「いっ、いや、今のは何でもないの!何でもないないナイアガラだよぉ~!」

結衣「ぷっ…!」

危なかった…。
まぁこの姿でバレる事はないと思うけど。

結衣「おっと!早く行かないと遅刻しちゃう。ほら、京子も早く行くよ。今日は『卒業式』なんだから!」

京子「うん…」

船見さん、今『卒業式』って言った?
じゃあもしかして今日は、歳納京子と船見さんの卒業式なの!?

結衣「皆でこうやって学校行くのも最後になるのか。寂しくなるね…」

あかり(綾乃)「そっ、そうだね…」

結衣「でも皆家近いし、あかりも来年になったらわたし達と同じ中学生だから!」

あかり(綾乃)「うっ、うん…」

結衣「ちょっとだけ寂しい思いさせちゃうけど、わたしも京子も中学校で待ってるから!」

京子「…」

結衣「京子、どうしたの?元気無いみたいだけど…」

京子「ううん、何でもないよ…」



29: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:49:26.18 ID:+CTp9RkZo
~七森小学校前~

結衣「じゃあわたし達はこっちだから、あかり、また後でね!」

あかり(綾乃)「うん」

一つ学年が上の歳納京子や船見さんと別れ、赤座さんの姿になってしまった私は赤座さんのクラスへ向かう。
もし赤座さんの記憶を持ってなかったら、どれだけ不便だっただろう。
人の過去を覗き見るというのはあまり良い事ではない気がするけれど…。

教室でしばらく待っていると、朝のホームルームが始まった。

担任「皆さん、今日はいよいよ卒業式です。6年生の人たちが気持ちよく卒業できるよう、皆でしっかりと送り出してあげましょうね」

クラス一同「はーい!」

卒業式、か…。
歳納京子は、幼馴染の赤座さんを残して、一体どんな気持ちで卒業していったんだろう?
きっと寂しかったんだろうな…。

そんな事を考えながら卒業式までの時間を教室で過ごしていると、式に出るはずの船見さんがやって来た。



30: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:51:05.82 ID:+CTp9RkZo
結衣「あかり!」

えーと、確か赤座さんは船見さんの事を…。

あかり(綾乃)「ゆ、結衣ちゃん…。どうしたの?」

赤座さんの口調で喋れても、やっぱりこの呼び方は恥ずかしい…。

結衣「大変なんだ!京子が…」

あかり(綾乃)「え…?」

結衣「京子が…どこにも居ないんだ!」



31: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:52:41.48 ID:+CTp9RkZo
…。

結衣「それじゃ、わたしは校舎を探すから、あかりは外をお願い!」

あかり(綾乃)「わかったよぉ!」

結衣「先生も探してくれてるみたいだから、きっとすぐ見つかるよ…」

あかり(綾乃)「うん…」

こうして、私達は居なくなった歳納京子を探すことになった。
それにしても、どうして急に居なくなったりなんか…。

ズキッ…!

綾乃(んっ…!)

その時、急に頭に強い痛みが走った。
同時に、頭の中に誰かの声が響いてくる。

??『赤座あかりの体にはもう慣れましたか?』

やっぱり、最初の場所で出会ったあの声の主だった。

??『では、最初の試練です』

ようやく試練開始って訳ね。

??『突如失踪したあなたの想い人、歳納京子を見つけ出してください』



32: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:54:16.96 ID:+CTp9RkZo
船見さんに指示された通り、私は校庭や体育館裏など、校舎の外を中心に探していた。
が、一向に歳納京子が見つかる気配はなかった。
校舎の時計を見ると、式の開始までもうあまり時間が無い…。

綾乃(どうしよう東照宮…)

もうこんなダジャレを考えている余裕もない。
一縷の望みに賭け、私は学校の外へと飛び出した。

綾乃(私の予想が正しければ、歳納京子は多分あそこに…)

全速力で私が向かったのは、近所の公園だった。
赤座さんの記憶の中で、3人はよくこの公園で遊んでいたのだ。

綾乃(いた!)

私の予想通り、歳納京子はそこにいた。
ベンチに座り込み、一人で何か考え事をしているようだ。



33: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:55:20.29 ID:+CTp9RkZo
あかり(綾乃)「としの…」

しまった!
いつもの赤座さんの呼び方で、えーと…。

あかり(綾乃)「きょ、きょきょきょきょ京子ちゃん…///」

ああもう恥ずかしい!
赤座さんの姿じゃなかったら、とてもこんな呼び方なんて出来ない。

京子「あかりちゃん…?」

そんな私の恥じらいなどまるで知らない歳納京子は、無邪気な瞳で私を見つめてくる。
いや、今は歳納京子を学校に連れ戻すのが最優先だ。
今の私は『赤座あかり』なのだし、何も恥らう事は無い。

あかり(綾乃)「早く戻らないと、卒業式始まっちゃうよ」

京子「うん…」

歳納京子は、朝と同じくどこか浮かない顔をしていた。



34: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:56:32.17 ID:+CTp9RkZo
あかり(綾乃)「もしかして、卒業式に出るのが嫌なの…?」

京子「…!?」

歳納京子が、いかにも図星という顔をした。

あかり(綾乃)「そうなんだね…」

京子「うん…」コクン

あかり(綾乃)「やっぱり、卒業しちゃうのが寂しいんだよね…」

京子「…」

あかり(綾乃)「でも大丈夫だよ。ゆ、結衣ちゃんとは中学校でも一緒だし…」

あかり(綾乃)「それに、あっ、あかりもあと1年したら同じ学校に行くから!だから、きょっ、京子ちゃん、寂しがらなくても…」

京子「…違うよ!」



35: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:57:39.61 ID:+CTp9RkZo
あかり(綾乃)「え…?」

京子「私の事はいいの!私は…」

京子「私たちが卒業して、あかりちゃんが一人ぼっちになっちゃうのがイヤなの!!」

あかり(綾乃)「京子ちゃん…」

京子「私たちが2人とも一気に卒業しちゃったら、あかりちゃん一人ぼっちだもん…!そんなの絶対寂しいもん…」

…私はとんだ思い違いをしていた。
歳納京子は、自分が寂しい事よりも、赤座さんが一人ぼっちになる事が嫌だったんだ。

京子「あかりちゃんを一人ぼっちにするなんて…私…」グスン

歳納京子の声が涙交じりのものになる。
彼女は、自分の寂しさでは無く、他人の痛みに涙する。
そんな、誰よりも相手の事を気づかう少女だった。
思えば、中学生になってからだって、いつも自由気ままに行動しているように見えて、結構気を使ってくれてたっけ…。
私と仲良くなろうとしてくれた事だって、きっと彼女なりの気づかいだったのかもしれない。



36: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 16:58:52.36 ID:+CTp9RkZo
あかり(綾乃)「京子ちゃん…。いえ、歳納京子。よく聞いて」

京子「あかりちゃん…?」

あかり(綾乃)「私、赤座あかりはきっと立派な中学生になってあなたに会いに行くから。だから待ってて。ね?」

京子「うん…」

あかり(綾乃)「だからあなたも、中学校でちゃんと頑張って欲しいの。あなたが誰よりも優しい子だってのは、私がちゃんと知ってるから」

京子「あかりちゃん…」

あかり(綾乃)「約束…できるかな…?」

京子「うん…、約束する…。私、中学校でたくさん友達作って、それで、あかりちゃんの事待ってるね!」

あかり(綾乃)「うん。偉い偉い」ナデナデ

京子「も、もう。あかりちゃんってば…///」

歳納京子は照れながらも、嬉しそうに目を細めている。
私も赤座さんの姿だと、いつもより自然に歳納京子に接する事が出来ている気がする。



37: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 17:01:27.11 ID:+CTp9RkZo
あかり(綾乃)「じゃあ、そろそろ学校に戻らないとね」

京子「うん。あのね…」

あかり(綾乃)「?」

京子「今日のあかりちゃん、いつもと違って何か大人っぽかったけど、凄く安心した。ありがとう、あかりちゃん」

あかり(綾乃)「お礼はノンノンノートルダムよ!」

京子「えっ…?」

しまった!つい癖で…。

あかり(綾乃)「さっ、さぁ~。早く戻らないと…」

ズキッ…!

あかり(綾乃)「…っ!」

またあの痛みがやって来る。
今度はさっきよりも強烈だ。
意識が…どこか遠くへ…飛ばされそうに…。



38: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 17:02:43.31 ID:+CTp9RkZo
…。

綾乃「…はっ!?」

あかり「気がつきましたか?杉浦先輩」

綾乃「ここは…?」

どうやら最初の試練の部屋、『番人』が居る所へ戻ってきたようだ。

綾乃「試練は終わったのかしら…?」

あかり「はい。お疲れ様でした」

綾乃「…あれは、赤座さん、あなたの記憶なのね?」

あかり「はい。京子ちゃんはああ見えて、昔は凄くか弱くて繊細な子だったんです。それを知ってもらいたくて…」

綾乃「そうね。でも…」

それだけじゃない。私がこの試練で学んだ事は…。

綾乃「確かに弱い存在だったかもしれない。でもあの子は…。歳納京子は誰よりも他人を思いやる事が出来る女の子。そしてそれは、明るくなった今でも同じ。そうでしょ?」

あかり「そうですね!ふふっ、あかり、嬉しいなぁ。京子ちゃんの事をこんなに想ってくれる人が居るなんて」

綾乃「なっ!?べっ、別に…。そういう訳じゃ…///」

あかり「杉浦先輩、京子ちゃんの事、よろしくお願いします」ペコリ

綾乃「…ええ」

赤座さんに別れを済ませ、私は第一の試練の部屋を後にした。



39: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 17:04:54.50 ID:+CTp9RkZo
~試練の間~

??『第一の試練、お疲れ様でした』

またしても、謎の声の主が私に語りかけてくる。

??『まぁ、これくらいは難なくこなせると信じていましたよ』

全く、こっちの苦労も知らないで…。
いや、全部見られてたとしたら知っているのかな…?

綾乃「お喋りはいいから、とっとと次の試練に案内してちょうだい!」

??『ふふっ、相変わらず威勢の良いお方ですね。焦らなくても、次の試練はもうほら…』

次の試練は2番の扉か。よし…!

綾乃「この調子で、次の試練も突破よ!」

私は勢い良く『Ⅱ』と書かれた扉を開ける。



40: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 17:07:20.12 ID:+CTp9RkZo
~第二の試練・ちなつの章~

二人目の番人は誰だろうと考えながら扉を開けると、そこに待っていたのは、またしても私とはあまり馴染みの無い人物だった。

綾乃「吉川さん…?」

ちなつ「はい、待ってましたよ杉浦先輩」

さっきの赤座さんといい、どうして私とあまり関係ない子ばっかりなんだろう…?

ちなつ「杉浦先輩、おめでとうございます!京子先輩に告白出来たんですね!」

綾乃「う、うん…」

ちなつ「これで杉浦先輩と京子先輩が結ばれれば、必然的に結衣先輩は私の元へ…。ぐふふふ…」

綾乃「あの、吉川さん…?」

ちなつ「はっ!ごめんなさい、私ったら…」

何か今黒いオーラみたいなのが見えた気がしたけど…。



41: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 17:11:13.19 ID:+CTp9RkZo
ちなつ「それで、杉浦先輩、もう分かってると思いますケド…」

綾乃「ええ、『試練』でしょ?」

ちなつ「はい。じゃあ目を閉じてもらえますか?」

綾乃「…ええ」

言われたとおりに瞳を閉じる。

ちなつ「それでは『第二の試練』、スタートしますねっ♪」

吉川さんがそう言うと、私の体がどこか遠くへと飛ばされていく様な感覚がまたやって来る。
さっきも味わったけど、やっぱりこの感覚はどうも慣れないな…。



42: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 17:16:43.77 ID:+CTp9RkZo
―――
――


~謎の空間2~

また、ここにやって来た。

前回と同じく、昼休みの終わりを告げるチャイムの音でこの世界は始まる。

この空間では相変わらず、教室の中で歳納京子が一人で泣いていて、周囲の人々はそれを白い目で見ている。

そして、私には何もすることが出来ない。

綾乃(あれ…?)

いや、さっきとは違う。

体に力を入れてみると、ほんの少しだけど体を動かすことが出来る。

私は、歩き出そうと足に力を入れた。

すると、私の体は、一歩前進する。

綾乃(でも…)

一歩進んだところで、私の体はまた動かなくなる。

まだ、全然届かない。

私は、まだ試練を1つしか終わらせていない。

私が動けないでいると、またしても船見さんが歳納京子の元へと向かう。

そして、船見さんが歳納京子を連れ出すのをまた見送って、私は次の試練へと向かう…。



44: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 17:26:31.68 ID:+CTp9RkZo
…。

??「あ、ちなつちゃん。おはよう」

目を開けると、視界に飛び込んできたのは二つの赤いお団子。

綾乃(赤座さん?ここは…)

畳にふすま、そして掛け軸…。
どうやら『ごらく部』の部室のようだ。
さっきの試練よりはいくらか見慣れた光景に、少しだけホッとする。

あかり「ちなつちゃんがお昼寝なんて、珍しいね」

ちなつ(綾乃)「あ、えっと…」

今の私は吉川さんになってるのよね?
前の試練と同じだとすれば…。

ちなつ(綾乃)「ご、ごめん!ちょっとトイレ…!」

鏡で自分の姿を見れば、色々と情報が入ってくるはず…!



45: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 17:38:33.33 ID:+CTp9RkZo
慌ててトイレに駆け込み、鏡に自分の姿を映したところで、吉川さんの記憶、人格、喋り方など、様々な情報が頭の中に入り込んでくる。

綾乃(とりあえずこれで、しばらくは吉川さんになりきれるはず…)

とはいえ、ごらく部の一員として過ごすのはちょっと緊張する。
大きく深呼吸をし、私は再び部室に戻った。

あかり「あ、ちなつちゃん。大丈夫?どこか具合悪いの…?」

ちなつ(綾乃)「ううん、大丈夫だよ。あかりちゃん、ありがとう」

こっちの試練でも、やっぱり赤座さんは良い子だ。
そんな事を考えていると、部室の外から騒がしい足音が聞こえてくる。

ドタドタ

あかり「あ、京子ちゃんたち来たのかな?」

ちなつ(綾乃)「えっ…?」



46: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 17:42:26.35 ID:+CTp9RkZo
京子「やっほー!ちなちゅー!!!」ダキッ

ちなつ(綾乃)「えぇぇぇぇぇぇぇぇ///」

とととと歳納京子に抱きつかれてるううううぅぅぅぅ!!!

結衣「おいコラ」ゴツン

京子「いてっ」

結衣「全く毎日毎日懲りないヤツだな…」

京子「ちぇーっ」

綾乃(よ、吉川さんって、毎日歳納京子にこんなことされてるの…?)

結衣「ん、ちなつちゃん、どうかしたの?」

ちなつ(綾乃)「いっ、いえ、別に…///」

京子「ははーん、ついにちなちゅがデレたかー!」

結衣「調子に乗るな」

とっ、歳納京子が毎日こんな事してくれるなら、このままでも別に…。
ってダメよ!ちゃんと試練をクリアしないと!



47: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 17:44:01.78 ID:+CTp9RkZo
結衣「そういえばさ、この前新作のゲーム買ったんだけど…」

京子「お、やるやる。じゃあ早速今から結衣ん家行こう!」

あかり「あかりも行くよぉ。ちなつちゃんも来るよね?」

ちなつ(綾乃)「う、うん…」

京子「本当に今日はどうしたのちなつちゃん?いつもなら喜んでついてくるのに」

ちなつ(綾乃)「だ、大丈夫です!何でもありませんから…」

こうして、私達は船見さんの家に行くことになった。



48: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 17:44:47.83 ID:+CTp9RkZo
~結衣の家~

京子「それっ!ほれっ!あぁーっ!」ピコピコ

結衣「あ、死んだ」

京子「ぐぬぬ、何故勝てない…」

結衣「お前はいつもレベル上げしないからだよ」

京子「だってー!ギリギリで勝った方が楽しいじゃん!」

結衣「はいはい」

あかり「あかりも結構レベル上げてから進めるよぉ」

ちなつ(綾乃)「…」

気まずい…。
やっぱりこの三人の中にはどうしても入っていけない。
このメンバーとしっかり打ち解けてる吉川さんって、もしかして凄いのかも…。



49: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 17:46:31.94 ID:+CTp9RkZo
あかり「あれ、結衣ちゃん。これって…」

赤座さんが、床に無造作に置いてあったDVDを手に取る。

結衣「ああ、私たちがまだ小さかった時に、近所で遊んでたのをお母さんがビデオで撮ってくれたやつだよ」

あかり「わあ、あかり達も映ってるの?」

結衣「うん。この前実家で見つけて持ってきたんだ」

あかり「そうなんだ」

そう言うと、赤座さんはDVDを再び元の位置に戻す。
船見さんも、歳納京子も、誰もDVDを見ようとはしない。

ちなつ(綾乃)「あの、それ…見ないんですか…?」

あかり「あっ、そうだよねぇ!あかり、うっかり戻しちゃったよぉ…!」アセアセ

結衣「ちなつちゃん、これ見たい?」

ちなつ(綾乃)「えっと…」



50: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 17:47:52.31 ID:+CTp9RkZo
歳納京子の小さい頃…ちょっと気になるかも…。
それに、吉川さんだったらきっと…。

ちなつ(綾乃)「みっ、見たいです…!」

結衣「そっか、じゃああかり、そのDVDとって」

あかり「はい、結衣ちゃん」

京子「…」

それにしても歳納京子、さっきからどうして黙っているのかしら…。

結衣「じゃあ再生、っと」ポチ

テレビに、公園と、そこで仲良さげに遊ぶ三人の女の子が映る。

ちなつ(綾乃)「わ、みんな可愛い…」キュン



51: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 17:49:18.05 ID:+CTp9RkZo
画面の向こうの三人の女の子は、公園で鬼ごっこをしている様だった。

―――


あかり『へへっ、ゆいちゃんみっけ!』

結衣『わっ!いつのまに…』

あかり『あかり、おにごっことくいだもん!』アッカリーン

京子『わたしもすぐつかまっちゃった…』

結衣『じゃあ、つぎのおに、きめよっか。じゃーんけーん…』

京子&結衣&あかり『ぽん!』

京子『ま、まけちゃった…』

結衣『じゃあ、きょうこがおに!がんばれー!』

京子『う、うん…。いーち、にー…』



52: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 17:50:46.48 ID:+CTp9RkZo
…。

京子『ゆっ、ゆいぃ…。あかりちゃぁん…。まってよぉ…』

結衣『きょうこ!?どうしたの?』

京子『おいつけないよぉ…』グスン

結衣『なっ、なかないで、きょうこ!そうだ、おに、かわってあげるから』

京子『ほんと…?』ウルウル

結衣『もちろん!あかりもいいよな?』

あかり『もちろんですぜ、おやびん!』ビシッ

京子『ふたりとも、ありがと!』ニコッ



53: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 17:52:23.91 ID:+CTp9RkZo
…。

綾乃(こっ、この歳納京子…!かわいすぎる…!!!)

ちなつ(綾乃)「きょ、京子先輩は本当に小さい頃は泣き虫だったんですね…」

京子「まーねー」

結衣「今もこれくらい大人しくしててくれると良いんだけどな」

京子「なにをー!京子ちゃんはいつだって清楚な美少女だぞー!」

あかり「あかりは、昔の京子ちゃんも、今の京子ちゃんも、どっちも可愛いと思うよぉ」

綾乃(確かに、昔の歳納京子も可愛いけど、私は…)



54: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 17:54:07.33 ID:+CTp9RkZo
結衣「それにしても、この公園、懐かしいなぁ」

あかね「そうだねー」

京子「昔は良くここで3人で遊んだなー」

ちなつ(綾乃)「…」

なんだろう、この感じ。
歳納京子と船見さんと赤座さんが幼馴染で仲良しだっていうのはずっと前から知ってた事。
でも何故か今、やけに胸がチクチクする。

綾乃(ああ、そっか…)

吉川さんはきっと私と同じなんだ。
私がいつも、歳納京子と船見さんを見て、この2人の間には入れないなって思うように、吉川さんも、心のどこかで幼馴染の3人が羨ましかったのかもしれない。
私は…、それに吉川さんだってきっと…、みんなの事が大好き。
でも、そんな気持ちとは裏腹に、長い時間をかけて積み上げてきた『絆』というものにわずかな『嫉妬』という感情が、どうしても芽生えてしまう。
そんな自分の感情に自己嫌悪を抱きながら、それでもやっぱり自分の気持ちに嘘はつけなくて…。



55: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 17:57:40.20 ID:+CTp9RkZo
結衣「ちなつちゃん、大丈夫…?」

そんな事を考えていたから、船見さんが私を心配している事にすぐには気づけなかった。

ちなつ(綾乃)「えっ…?」

結衣「さっきから何だか顔色悪そうだけど…」スッ

ちなつ(綾乃)「ちょっ、ええぇぇ!?」

船見さんがおでこを近づけてくる。
私のおでこと船見さんのおでこがくっついて、何だか恥ずかしい。

結衣「わっ、すごい熱…!!」

ちなつ(綾乃)「えっ、熱…?」

そういえば、さっきからやけに体がだるいなと感じていた。
慣れない吉川さんの体で動いている所為かなって思ってたんだけど…。

フラッ

京子&結衣「ちなつちゃん!」

途端に体の力が抜けたかと思うと、私はその場に倒れこんだ。



56: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 17:59:05.60 ID:+CTp9RkZo
…。

??『…ゃの、杉浦綾乃…』

声が聞こえる。
この声は…。

??『この声が聞こえますか、杉浦綾乃』

聞こえる、という事は、私は試練の間に戻されてしまったのだろうか…。

??『いえ、それは違います。第二の試練はこれから始まります。貴方が風邪をひいて倒れたことにも、ちゃんと意味があります』

ああ、そう。
もう何だっていいから、早く試練の内容を教えて欲しい。

??『その者、吉川ちなつが感じている、他の三人との心の距離を縮めよ』

えっ…!?

??『それが、第二の試練です』

ちょっと、そんなのどうやって…!

??『それでは健闘を祈りますよ、杉浦綾乃…』



57: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:00:14.37 ID:+CTp9RkZo
…。

??「…なつちゃん、ちなつちゃん」

ちなつ(綾乃)「んんっ…」

誰かの声がする…、私、吉川ちなつを呼ぶ声が…。

結衣「ちなつちゃん、良かった…。目が覚めたんだね」

ちなつ(綾乃)「あれ、ここは…」

あかり「急に倒れるからビックリしちゃったよぉ」

そうか、私、熱出して倒れて…。

京子「3時間くらいずっと寝てたんだよ?」

ちなつ(綾乃)「え、そんなに…」

時計を見ると、もう9時を回っていた。

結衣「とりあえず、ちなつちゃんの家には連絡入れておいたから、今日は泊まっていきなよ」

ちなつ(綾乃)「そうですね、わかりました…」

試練をクリアする為にも、ここは泊まっていった方が何かと好都合だろう。



58: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:02:43.93 ID:+CTp9RkZo
京子「よし、じゃああかり、私たちも泊まって…」

結衣「よせよ京子、ちなつちゃんは病人なんだから…」

ちなつ(綾乃)「わ、私だったら大丈夫です!もうすっかり体調良くなりましたから…」

結衣「そうは言っても…」

船見さんが再びおでこを近づけてくる。

結衣「あれ、本当だ。熱ひいてる…」

そう、目が覚めたら体調は驚くほどに回復していた。
これもきっと、あの『声の主』の仕業に違いない。

京子「じゃあ決まり、今日はごらく部みんなでお泊りだー!!」



59: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:04:39.13 ID:+CTp9RkZo
その後、皆で船見さんの作った夕食を食べ、交代でお風呂に入る事になった。の、だが…。

京子「一人ずつ入ると時間かかるから、二人で一緒に入ろう!」

結衣「またお前は…」

京子「と、いうわけで、ちなちゅー!!」

ちなつ(綾乃)「わわっ…!」

京子「ちなつちゃんとお風呂ー!」

ちなつ(綾乃)「え、ええっ…!?」

歳納京子とお風呂だなんてそんな…。

京子「おろ…?今日はあまり嫌がらないね?」

ちなつ(綾乃)「別に、嫌なんかじゃ…///」

吉川さんの体で一緒に入るのは、何だかズルした気持ちになるけど、これも試練の為だと思えば…!

ちなつ(綾乃)「いいですよ…。一緒に入りましょう…///」

京子「う、うん…///」



60: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:06:03.69 ID:+CTp9RkZo
…。

カポーン

一つの浴槽に、歳納京子と2人っきり…。
合宿の時にも一緒に入ったけど、やっぱり緊張する…。

京子「ちなつちゃんさぁ…」

そんな私の戸惑いを余所に、歳納京子は珍しく、真面目な表情を浮かべていた。

京子「何だか今日、やけに元気無かったよね。風邪のせいだけじゃなくて…」

やっぱり歳納京子は、こういう時だけ鋭い。

京子「何かあった…?」

ちなつ(綾乃)「いや、その…」

京子「やっぱりあのビデオ?」

ちなつ(綾乃)「!?」

京子「ごめんね、ちなつちゃんの前で見るなんて無神経だったよね…」

本当に、どうしてコイツはいつもこういう所で気が利くんだろう…。



61: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:07:53.86 ID:+CTp9RkZo
ちなつ(綾乃)「私は、自分が嫌なんです…。みんなのこと大好きなのに、3人が昔からの幼馴染だって事、どうしても羨ましいと思っちゃう。そんな自分が嫌…」

これは、吉川さんの気持ちであり、私自身の気持ちでもある。
私もやっぱり、いつだって船見さんと歳納京子の関係が羨ましかった。

ちなつ(綾乃)「それで、一人で勝手に落ち込んで、みんなに心配かけて、本当に迷惑ですよね、私…」ポロポロ

気がつくと私は泣いていた。
それが吉川さんの体が流させる涙なのか、それとも私、杉浦綾乃自身の涙なのかはわからない。
きっと両方だろう。

京子「ちなつちゃん、聞いて欲しい事があるんだけど、いいかな」

ちなつ(綾乃)「なんですか…?」グスッ

京子「結衣とあかりは私にとって大切な幼馴染。一緒に過ごしてきた思い出もやっぱり大切。でもね…」

京子「私は今が一番大切なんだよ。この『4人』で過ごす今が」

ちなつ(綾乃)「4人で過ごす、今…」



62: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:10:00.66 ID:+CTp9RkZo
京子「ちなつちゃんは、心のどこかで私たち3人に遠慮してる部分があったんだよね?ずっと隠してきたけど…」

ちなつ(綾乃)「…」

それは、この私、『杉浦綾乃』が答えてしまってはいけない質問。
だから私は、無言でいた。

京子「だから、今日始めてちなつちゃんの方から打ち明けてくれて、私本当に嬉しかった!」

そう言うと、歳納京子は浴槽から立ち上がる。

京子「だからちなつちゃん、これからも4人でずっと一緒に居ようね!!」

ちなつ(綾乃)「…はい!」



63: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:12:28.85 ID:+CTp9RkZo
…。

結衣「ちなつちゃん、ちょっといいかな…」

お風呂あがりに、今度は船見さんに声をかけられた。
歳納京子は、リビングでラムレーズンに夢中だ。

ちなつ(綾乃)「はい、なんでしょうか…?」

結衣「あの…」

船見さんはバツの悪そうな顔を浮かべたあと、再びこちらに真剣な表情を向け、頭を下げてきた。

結衣「今日は本当にごめん、私たち無神経だった…!」ペコリ

ちなつ(綾乃)「結衣先輩…」

結衣「昔のビデオなんか見てもちなつちゃんは辛いだけだよね。本当にゴメン…」

ちなつ(綾乃)「いいんです先輩。それに…」



64: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:14:05.18 ID:+CTp9RkZo
今の私は、もう気づいていた。

ちなつ(綾乃)「結衣先輩、最初、ビデオ見るの躊躇ってましたよね?あれ、私に気を使ってくれたんですよね…?」

結衣「うん…」

ちなつ(綾乃)「その気持ちだけで私は十分嬉しかったです」

結衣「ちなつちゃん、あのね…」

結衣「私、今までずっと京子やあかりと過ごしてきたけど、同じくらいにちなつちゃんも大切なごらく部の仲間だと思ってるんだ」

結衣「だから、これからもよろしくね」

仲間…、か。
吉川さん本人はきっと『仲間』なんて答えじゃ満足できないんだろうけど…。

ちなつ(綾乃)「私も今日、今まで以上にごらく部の事が好きになりました!これからも、よろしくお願いしますね!」



65: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:15:30.78 ID:+CTp9RkZo
…。

全員お風呂からあがったところで、着ぐるみのパジャマを着て布団に入る。

あかり「Zzz…」

早いもので、赤座さんはもう寝てしまった。

あかり「ムニャムニャ…。ちなつちゃん、ずっと一緒だよぉ…」Zzz

随分と可愛い寝言を言ってくれる。

あかり「ゆいちゃんも…、きょうこちゃんも…、ちなつちゃんも…、みーんな、ずっと一緒…」Zzz

その赤座さんの寝言に、心が温かくなると同時に、私は一つの事を思った。

綾乃(ごらく部のみんなが、いつまでも一緒に居られたらいいな…)

私もまた、眠りに落ちていった。



66: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:17:11.09 ID:+CTp9RkZo
…。

綾乃「ううん…」

ちなつ「おかえりなさい、杉浦先輩」

ここは第二の試練の部屋。
どうやら戻ってこれたみたいだ。

綾乃「それで、試練は…」

ちなつ「はい、合格です!」

綾乃「そう…。あの、吉川さん…」

どうしても気になる事があった。

綾乃「あれは、あなたの『記憶』だったのかしら…?」

ちなつ「そうですねぇ、『記憶』とはまた違うと思います。あれは私の人生における『可能性』の一つです。だから、杉浦先輩が気に病む事はないと思いますよ♪」

綾乃「でも…」

やっぱり、人のプライベートな部分、しかもあんなデリケートな問題に踏み込んでしまったというのは、少々気が引けてしまう。

ちなつ「そもそも本当の私だったらあんなに遠慮なんてしません。例え京子先輩と幼馴染だろうと、ガンガン結衣先輩にアタックします!」

綾乃「ふふっ、あなたがちょっと羨ましいわ」

私には、そんな生き方出来そうにない。



67: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:17:50.43 ID:+CTp9RkZo
ちなつ「でも、私が『幼馴染』という関係を妬む気持ちがあったのは本当です…。だから、杉浦先輩の試練に私が選ばれたんだと思います」

綾乃「そうかもしれないわね…」

ちなつ「杉浦先輩、京子先輩をお願いしますね。やかましくて面倒臭いけど、可愛いところもいっぱいある人だから…」

綾乃「ええ。あのね、吉川さん…」

綾乃「私、絶対にごらく部を守り抜くって約束するわ」

ちなつ「杉浦先輩…」

綾乃「私、歳納京子ともし結ばれたなら、絶対に側に居たい、離れたくないって思ってた。でも…」

綾乃「吉川さん、それにごらく部のみんなを寂しがらせたら、私は歳納京子を許さないわ。罰金バッキンガムよ!」

ちなつ「先輩は優しいですね。京子先輩には少しもったいないくらいです」

綾乃「そんな…勿体ないだなんて///」

ちなつ「杉浦先輩、絶対京子先輩と幸せになってくださいね!!」

吉川さんに見送られ、私は第二の試練の部屋を出た。



68: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:18:52.56 ID:+CTp9RkZo
~試練の間~

??『お帰りなさい、杉浦綾乃』

綾乃「いちいちここに戻ってくるのも面倒ね…」

??『まぁそう言わずに。第二の試練、お疲れ様でした』

綾乃「試練、ね…。」

??『何か不服そうですね?』

綾乃「人の記憶を見るというのは、あまり良い気分がしないわね…」

??『前にも言いましが、ここは貴方とその友人達の潜在意識の集合により作られた世界です』

??『よって、『番人』となってもらってる以上、その友人達も、貴方に記憶を知ってもらう事を潜在意識下で望んでいる筈です』



69: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:20:44.22 ID:+CTp9RkZo
??『だから、貴方が気に病む事は無いと思われます。杉浦綾乃』

綾乃「そうかもしれないけど…」

??『どこか納得いかないようですね…。それでは、貴方の想い人を諦めますか?』

綾乃「そっ、それは嫌!」

??『では試練を頑張っていただくしかないですね』

やっぱりそうなるのか…。

綾乃「その『試練』が必要羊ケ丘展望台なら、やるしかないわね!」

??『…』

綾乃「…何よ?」

??『いえ。では、次の試練も頑張って下さい』

綾乃「ええ、とりあえず細かい事は気にしないわ」

私は、『Ⅲ』と書かれたドアを開けた。



70: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:22:24.27 ID:+CTp9RkZo
~第三の試練・向日葵と櫻子の章~

櫻子「杉浦先輩、おめでとうございます!」

向日葵「ついに想いを伝えられたのですね」

今度は大室さんと、古谷さんか…。

綾乃「あなた達は、2人一緒なのね」

櫻子「はい!こんな所でも向日葵と一緒なんて私はウンザリなんですけど…」

向日葵「それはこっちの台詞ですわ!」

櫻子「なんだとぉー!!」

ワイワイガヤガヤ

この2人は、ここでも相変わらずね…。


綾乃「それで、あの…」

櫻子「あ、試練ですよね?」

向日葵「それでは…」

櫻子&向日葵「「杉浦先輩、今から貴方を『第三の試練』へとお連れします」」



71: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:23:57.46 ID:+CTp9RkZo
―――
――


~謎の空間3~

また同じ光景だった。

昼休みの終わりを告げるチャイム。

教室で、歳納京子が一人泣いている。

それを、他の人たちは冷たい目で見ている。

もしかしたら、試練の度に最初はここに飛ばされるのだろうか…?

綾乃(とにかく、歳納京子の所へ…)

そう思い、また一歩を踏み出す。

だけど、歳納京子の元へ行くには、まだまだ距離がある。

綾乃(もしかして、試練を終える度に一歩ずつ進めるのかしら…?)

今度もまた、船見さんが歳納京子を教室の外へ連れ出す。

やっぱり、歳納京子の側に居るのは、いつだって船見さん。

私が声をかけるより先に、船見さんが連れて行ってしまう…。

そして私は、また新たな試練へと挑む…。



72: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:26:59.81 ID:+CTp9RkZo
…。

目覚めたと思い、目を開けてみて違和感に気づいた。
体の感覚が無い。
前の試練みたく、誰かになりきっているという感覚がないのだ。

向日葵『もう、何なんですの一体!?』

綾乃(古谷さん…?)

櫻子『だからぁー!向日葵は私の下僕なの!私とだけ一緒に居ればいいの!!』

綾乃(それに、大室さんも…)

向日葵『呆れた…。やきもちもいい加減にして欲しいですわ…』

櫻子『今モチの話なんてしてない!』

向日葵『はぁ…』

どうやら私は、この2人のやり取りを、いわば『幽霊』のような状態で眺めているみたいだ。



73: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:27:44.80 ID:+CTp9RkZo
向日葵『ねぇ、今回は仕方ないでしょう?クラスのお友達に直接勉強を教えて欲しいと頼まれたのですから…』

櫻子『何だよ!その子の勉強は見て、私の勉強はどうてもいいっていうのかよ!この馬鹿おっぱい!!』

向日葵『櫻子、あなたももう少し素直に頼んでくれれば、わたくしだって…』

櫻子『向日葵は私の下僕だから、いつでも私の勉強見る義務があるの!!』

向日葵『…』イラッ

櫻子『ちょっと、何か言えよー!』

向日葵『もういいですわ…。今回は本気で呆れました』

櫻子『なっ、何だよ…』

向日葵『もう帰ってくださる?口も利きたくありませんわ…』

櫻子『こっ、こっちだって!!向日葵のバーーーーカ!!』

綾乃(この2人ったらまた喧嘩して。でも今回のは結構深刻そう…)

ここで私の意識は、再び別の場所へと飛ばされる。



75: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:29:22.09 ID:+CTp9RkZo
…。

??「…ん」

体の感覚がある。
今度こそ、誰かの姿になりきっているようだ。
だけどここは、知らない家の部屋だった。
とりあえず、自分の姿を見回してみる。

綾乃(え…。これ、誰…?)

今回はそもそも、誰の姿になっているのかさえ分からなかった。
恐らくは私の知らない人。
てっきり、大室さんか古谷さんのどっちかになると思っていたのに。

綾乃(見慣れない制服…。背は結構高いみたいね。高校生くらいかな…)

ガチャ

櫻子「ただいまー」

大室さんの声。
ということは、ここは大室さんの家!?

櫻子「あれ、ねーちゃんもう帰ってたのか。早いなー」

綾乃(ねっ、ねーちゃん!?!?)

大室さんにお姉さんがいるっていうのは、聞いたことあるけど…。



76: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:30:59.81 ID:+CTp9RkZo
とりあえず、いつもと同じように、鏡の前に立ってみることにした。
そうすれば、今私がなりきっている人物の記憶や人格が頭に入ってくるはず。

綾乃(うわ、スラッとしてて綺麗な人…。確かに大室さんに似てるわね)

その瞬間、私の頭の中に、この人物の記憶、人格が雪崩の如く流れ込んでくる。
この人は大室撫子。
大室さんのお姉さんで、高校生。
クールだけど、妹思いな素敵なお姉さん。

綾乃(いくら情報が入ってきたとはいえ、今回は全く知らない人のフリをするわけだから、結構大変かも…)

とりあえず、試練の内容がわかるまでは、自分(撫子)の部屋で大人しくしていたほうがいいかもしれないわね…。



77: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:33:38.04 ID:+CTp9RkZo
~撫子の部屋~

櫻子「おーい、ねーちゃーん!」

リビングから大室さんの声が聞こえてくる。

櫻子「メシ作ってー!」

撫子(綾乃)「きょ、今日の当番は櫻子でしょー!」

リビングに聞こえるよう、少し大きめの声を出す。

櫻子「ええー、めんどくさーい!」

綾乃(全くもう…)

溜め息をつきながら、リビングへと降りていく。



79: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:35:23.90 ID:+CTp9RkZo
撫子(綾乃)「ほら、頑張りなよ。私も手伝うから」

櫻子「ちぇっ」

大室さんは渋々と冷蔵庫を開け、食材を物色しはじめた。

櫻子「えーと、ハンバーグと、ミックスベジタブルと、味噌汁と…」

撫子(綾乃)「って全部レトルトかい!!」

櫻子「え、いつもの事じゃん?」ハテー

花子「いつもの事だし」

櫻子「うお、花子、いつのまに!?」

花子「さっきから居たし!」

大室さん、妹からもこの扱いなのね…。



80: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:37:21.77 ID:+CTp9RkZo
撫子(綾乃)「まあ、そろそろハンバーグくらい作れるようになりなよ。作り方ちゃんと教えるから」

櫻子「おおっ」

とりあえず、冷蔵庫からひき肉と玉ねぎを取り出す。

櫻子「何か、今日のねーちゃん優しいね?」

撫子(綾乃)「そっ、そうかなぁ…。そんな事ないないナイアガラだよ!」

櫻子「何それ…?杉浦先輩みたい…」

撫子(綾乃)「え…」ギクッ

花子「撫子ねーちゃんは、櫻子と違っていつも優しいし」

櫻子「なんだとー!」

大室さん、もう少し姉としての威厳というものを…。



81: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:37:50.26 ID:+CTp9RkZo
櫻子「…まあいいや。そんで、次はどうすんの?」

撫子(綾乃)「ホッ…」

危なかった…。

撫子(綾乃)「それじゃ、私がタネを作るから、櫻子はそれをこねて」

櫻子「あいよっ!」

大室さんは、私に教わった方法真似ながらハンバーグをこねていく。
不器用ながらも一生懸命なその姿を見ていると、思わず応援したくなってくるのは私だけだろうか。
思えば、いつもこの子に散々振り回されながらも、何だかんだで憎めないあたり、私はこの可愛い後輩を結構気に入っているのだろう。
それに、不器用なところとか、素直になれないところとか、どことなく私と似ている気がするし…。



82: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:40:01.17 ID:+CTp9RkZo
綾乃(素直になれない、か…)

そういえば、さっき見た記憶の中で、2人は結構深刻な喧嘩をしていたみたいだけど…。

櫻子「よし、できたー!!」ジャーン

撫子(綾乃)「お、どれどれ」

大室さんのこねてくれたハンバーグは、形が少し歪だけれど、努力の跡は見られた。
その証拠に、後半に作ったものは最初に作ったものに比べて、だいぶ綺麗に出来ている。

撫子(綾乃)「よし、じゃあこれ焼いたら晩御飯だ」

櫻子「よっしゃー!」



83: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:44:02.22 ID:+CTp9RkZo
…。

夕食を済ませたあと、3人は思い思いにくつろいでいた。
大室さんはボーっとテレビの画面を眺めている。
花子ちゃんは、自分の部屋に戻っていった。
そして私はというと、特にすることもなく、リビングでくつろいでいた。

綾乃(こんな事してていいのかしら…)

良いはずが無い。
そもそも、試練はどうなっているのだろう。

綾乃(でも、今回の試練の内容については、ある程度予想できるのよね…)

その考えに基づいて、私は大室さんに質問してみる。



84: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:45:23.37 ID:+CTp9RkZo
撫子(綾乃)「あのさ、櫻子」

櫻子「ん?」

撫子(綾乃)「ふるたn…、ひま子と喧嘩でもした?」

櫻子「な、な、なっ、なんでいきなりそんな事聞いてくんの!?」

撫子(綾乃)「いや、何だかいつもより元気ないからさ」

もちろんこれは大嘘。
さっき見た喧嘩の光景から予想して、カマをかけてみたけれど、大室さんは期待以上の反応をしてくれた。

撫子(綾乃)「で、喧嘩したの?」

櫻子「…」

この沈黙は肯定と捉えて良いだろう。



85: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:47:02.72 ID:+CTp9RkZo
撫子(綾乃)「恐らく今回も八割方あんたが悪いんだろうから、早いとこ謝って…って、えぇ!?」

櫻子「…」ポロポロ

大室さんは泣いていた。
声といった声もあげず、ただ瞳に大きな涙を浮かべている。

撫子(綾乃)「えっ、ちょっ、な、何も泣くこと…」

櫻子「うっさいバカ!!ねーちゃんには関係ないだろ!!」

撫子(綾乃)「ちょっと櫻子…!」

大室さんは駆け足で自分の部屋へと戻ってしまった。

綾乃(困ったわね…)

撫子さんの口調を意識して真似しすぎちゃったかな…。



86: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:47:49.09 ID:+CTp9RkZo
~撫子の部屋~

どうしたものかと思いつつ、お風呂をすませて自分(撫子)の部屋に戻り、ベッドに横たわる。
丁度その時、またしても『例の頭痛』がやってくる。

ズキッ…!

撫子(綾乃)「今回は何もかも予想通りね…」

??『ふふっ、貴方も大分慣れてきたようですね』

『声の主』が私に語りかける。
無駄話はいいから、とっとと試練の内容を伝えて欲しいものだ。

??『その様子だと、試練の内容についてはある程度予測できているようですね』

撫子(綾乃)「ええ、まあ」

??『では杉浦綾乃、あなたに第三の試練を伝えます』

??『大室櫻子と古谷向日葵を仲直りさせてください』



87: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:52:15.26 ID:+CTp9RkZo
…。

翌日、今日は日曜日なので学校はない。
昨晩、色々考えていて寝付けなかったせいか、目を覚ましたのは10時を回ったところだった。

綾乃(大室さんはまだ起きてないのね…。これは生徒会副会長としてしっかり注意しなきゃ!)

撫子(綾乃)「櫻子ー!そろそろ起きなー!」

シーン…

返事は無い。

コンコン

ドアをノックしてみてもやはり反応は無い。

撫子(綾乃)「櫻子、入るよー!」

ガチャ

撫子(綾乃)「あれ、起きてたの?」

櫻子「…」



88: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:53:42.83 ID:+CTp9RkZo
大室さんは目を覚ましてはいたものの、不機嫌な様子だった。
昨日の事をまだ気にしているようだ。

撫子(綾乃)「その…。昨日は悪かったよ。ねーちゃん言い過ぎた」

櫻子「…」

撫子(綾乃)「でも…さ、やっぱりひま子と仲直りしたいでしょ…?」

櫻子「…うん」

撫子(綾乃)「じゃあさ、やっぱりちゃんと謝りに行こうよ。私も一緒に行ってあげるからさ」

櫻子「…わかった」

良かった…。
あの2人の事だから、どちらかがちゃんと謝ればきっと仲直りするだろう。

櫻子「でも、私一人で行くから、ねーちゃんは来なくていいよ」

撫子(綾乃)「はいはい…」



89: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:55:32.09 ID:+CTp9RkZo
…。

とは言ったものの、やはり結果を見届けなければと思い、こっそり後をつけて来てしまった。

綾乃(まあ、すぐ隣なんだけどね…)

それにしても、幼い頃からずっとご近所さんだというのも、凄い話だなと思った。
ずっと一緒に居て、沢山ケンカもして、それでもやっぱり仲良し。
そんな関係が、少し羨ましくもある。

ピンポーン

大室さんが古谷さんの家のインターホンを押す。

ガチャ

向日葵「はーい、どちら様…って櫻子!?」

櫻子「よ、よう…」

向日葵「どうしたんですの?あなたとはもう口を利かないって言ったはずですが…」

櫻子「むっ…!」

古谷さんも、わざわざそんなに突っかからなくてもいいのに…。



90: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 18:57:02.39 ID:+CTp9RkZo
櫻子「あ、謝りにきた…!」

向日葵「櫻子…」

櫻子「ひ、向日葵は私の下僕だから、きっと私が居ないと困るだろうと思って、仕方なくだぞ…!」

向日葵「…」

櫻子「ほ、本当は仲直りなんてしたくないけど、櫻子様はものすごーく心が広いから、だっ、だから許してやる!」

向日葵「…」

櫻子「だっ、だから、向日葵も謝れ!」

向日葵「…」

少しの間、沈黙が続いた…。

櫻子「な、何か言えよ…!」



91: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:00:15.81 ID:+CTp9RkZo
向日葵「…どうして」

櫻子「え…?」

向日葵「どうしてあなたはいつも、そんな言い方しか出来ないんですの…?素直に一言、『ごめん』と言ってくれればいいのに…」

櫻子「なっ、何だとぉ?せっかく私が謝りに来たっていうのに!!」ムカッ

向日葵「ならもっと相応しい言い方があるでしょう!?それに、謝ってくれなんて私は頼んでませんわ!!」

櫻子「むっかーーー!!めっちゃムカついた!!もう向日葵なんて知らない!!」

向日葵「こっちこそですわ!櫻子のバカ!!!」

ガチャ!!

古谷さんが思い切りドアを閉めた。

櫻子「なんだよもう、向日葵のヤツ…!」

仲直り作戦は見事に失敗。
今度の喧嘩は、本当に一筋縄ではいかないようだった…。



92: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:02:38.93 ID:+CTp9RkZo
…。

撫子(綾乃)「ふぅ…」

2人のやりとりを見届け、私は部屋に戻ってきた。

撫子(綾乃)「どうしてこうなった…」

大室さんも古谷さんも、どうしてあんなに素直になれないんだろう?
本当は2人とも、仲良くしたい筈なのに…。

綾乃(でも、何となく気持ちはわかるのよね…)

そう、素直になれないのは私も同じなのだ。
本当は仲良くしたいのに、顔を見るとどうしても憎まれ口を叩いてしまう。
それは、やっぱり…

綾乃(歳納京子に本当の気持ちを知られるのが恥ずかしいから…)

もし大室さんもそうなのだとしたら、同じ素直になれない者同士、もっと力になってあげられるのかもしれない。
そう思い立った瞬間、私は再び大室さんの部屋まで走っていく。



93: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:03:10.64 ID:+CTp9RkZo
ガタガタ

ガチャ

撫子(綾乃)「櫻子ー!」

櫻子「―っ!?」ポロポロ

大室さんはやっぱり泣いていた。

撫子(綾乃)「その様子だと、やっぱりダメだったみたいだね」

本当は、後ろでコッソリ見ていたから知っているのだけど。

櫻子「ねーちゃん、私どうすればいいんだろ…?」

大室さんは相当参っているようだ。
私は、ゆっくりと大室さんの隣に腰掛ける。

撫子(綾乃)「櫻子はさ、何で素直になれないの?」

櫻子「わかんない…。わかんないけど向日葵に本当の事言うのは何かムカつくんだもん…」

撫子(綾乃)「そっか…」

ムカつくっていうのはきっと『恥ずかしい』って意味なんだろう。
本当に大室さんは素直じゃないわね。



94: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:03:41.29 ID:+CTp9RkZo
撫子(綾乃)「私もさ、櫻子の気持ち分かるんだ」

櫻子「え…?」

撫子(綾乃)「私にも居るんだよ。どうしても素直になれない相手っていうのが」

撫子(綾乃)「本当はさ、仲良くしたいって思ってるのに、そいつの前ではいつも憎まれ口叩いちゃって…」

櫻子「え、それって誰…?」

撫子(綾乃)「えっ、えーと…、クラスの友達かなぁー…」アセアセ

うん、嘘は言ってないはず。

撫子(綾乃)「私はさ、そいつに自分の本当の気持ちを伝えるのが怖いんだ…」

櫻子「…怖い?」



95: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:05:56.36 ID:+CTp9RkZo
撫子(綾乃)「うん。拒絶されたらどうしようとか、笑われたらどうしようとか、そんな事ばかり考えて、だから素直になれない。でもね…」

撫子(綾乃)「想いは、言葉にしなきゃ伝わらないんだよ」

櫻子「ねーちゃん…」

撫子(綾乃)「櫻子の本当の気持ち、今度は包み隠さずひま子に伝えてみなよ」

櫻子「でも、向日葵はきっと私の事なんてもう嫌いになっちゃってるよ…」

撫子(綾乃)「大丈夫だって!ひま子は本心では絶対櫻子の事、嫌ってなんかいない。ねーちゃんが保障する!」

櫻子「ホント…?」

撫子(綾乃)「もちろん。だから、もっかいちゃんと謝ってみな」

櫻子「うん。私、向日葵にちゃんと謝る…」

撫子(綾乃)「よしよし、いい子だ」ナデナデ

櫻子「うわっ、ちょっとねーちゃん、何すんだよ///」

とりあえず、大室さんの方はこれで大丈夫そうね。

後は…。



96: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:13:08.76 ID:+CTp9RkZo
~古谷家・玄関~

ピンポーン

撫子(綾乃)「おーい、ひま子ー!」

向日葵「あら、撫子さん…。どうしたんですの?」

撫子(綾乃)「いやちょっと、櫻子の事でね…」

向日葵「…」

撫子(綾乃)「ごめん、さっきのやり取り見てたんだ…」

向日葵「何となく、そうなんじゃないかって思ってましたわ」

やっぱり、古谷さんは気づいたか。

撫子(綾乃)「櫻子さ、人一倍素直じゃない子で、それはひま子もよくわかってると思うんだ」

向日葵「…ええ」



97: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:19:46.09 ID:+CTp9RkZo
撫子(綾乃)「だからさ、ちょっと位可愛げの無い事言っても、大目に見てやって欲しいんだ」

向日葵「そんな事くらいわかっていますわ。でも…」

向日葵「どうしても素直になれないんですの!櫻子の前だと嫌味ばかり言ってしまって…。そんな自分が嫌で…」

撫子(綾乃)「…」

やっぱり、素直になれないのは大室さんも同じか。
全く、いつも世話の焼けるコンビね。

撫子(綾乃)「じゃあさ、ひま子、約束してよ」

向日葵「約束…?」



98: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:20:14.05 ID:+CTp9RkZo
撫子(綾乃)「櫻子の方から素直に謝ってきたら、ひま子も素直になるって」

向日葵「…はい。その時はわたくしもちゃんと…」

撫子(綾乃)「それでいいよ。あ、もうすぐ櫻子が来ると思うから!」

向日葵「え!?撫子さん、それって…」

ズキッ…!

その時、また例の『頭痛』がやってきた。
ああ、これでようやくこの試練も終わりか。


この2人がどうなるのかを見届けられないのはちょっと残念だけど…。

撫子(綾乃)「じゃあ、私はもう行かなきゃいけないみたいだから」

向日葵「ちょっと撫子さん、行くってどこへ…!?」

この2人ならきっと大丈夫。
そう信じて、私はこの世界から消えた。



99: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:20:43.10 ID:+CTp9RkZo
…。

体の感覚が無い。
だけど、意識ははっきりしている。
これは、最初に第三の試練に来た時と同じ感覚。
私は、またしても『幽霊』になったかのようにその光景を見ていた。

向日葵『櫻子、あの…』

櫻子『ひまわりっ、ごめんっ!』

向日葵『え…?』

櫻子『いつも素直になれなくて、向日葵の事怒らせてばかりで、でも…』

櫻子『私は…グスン、向日葵の事がっ…、大好きっ…!!だから、嫌いにならないでぇっ!!』

向日葵『櫻子…』

ギュッ

櫻子『え…?』

古谷さんが大室さんを抱きしめる。



100: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:21:12.47 ID:+CTp9RkZo
向日葵『もう、本当に櫻子はバカですわね…』

向日葵『私が…、櫻子の事を本当に嫌いになる訳がないでしょう…』グスン

櫻子『向日葵、ごめんね…。それとありがと…』

向日葵『わたくしの方こそ…』

櫻子『向日葵、これからもずっと一緒だからね。私の大好きな幼馴染』

向日葵『ええ、ずっと一緒ですわ。わたくしの大切な幼馴染。そして…』





櫻子&向日葵『ライバル!!』



101: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:22:04.19 ID:+CTp9RkZo
…。

櫻子「杉浦先輩、おかえりなさい!」

綾乃「ただいま…」

向日葵「ずいぶんお疲れのようですが…」

綾乃「ええ、とっても疲れたわ…」

主にあなた達のせいでね!

綾乃「でも、幼馴染っていいわね…」

櫻子「杉浦先輩…?」



102: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:22:34.99 ID:+CTp9RkZo
歳納京子と船見さんの間にも、この2人みたいに強い絆があるのよね、きっと…。
だとしたら、そこに私の入り込む余地は…。

櫻子「ちょっと杉浦先輩!何暗い顔してるんですか!」

綾乃「え…?」

向日葵「ひとまず試練を終えたのですから、もう少し喜んでもいいのではないかと…」

綾乃「そうね…」

落ち込んでても、何も始まらない。

綾乃「頑張れ私、ファイトファイトファイファイビーチよ!!」

櫻子「おお、杉浦先輩がいつも通りだ!!」パチパチ



103: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:23:13.15 ID:+CTp9RkZo
~試練の間~

??『お疲れ様です。最初は余裕そうでしたが、結果、随分と苦戦されてましたね』

綾乃「大きなお世話よ。それより、大室さんのお姉さんになるなんて聞いてないわよ!」

??『何か不服でしたか?』

綾乃「ええ、大室さんのお姉さんは私の直接の知り合いではないわ。そんな人に勝手になりきるなんて…」

??『ああ、それでしたら心配は無用です』

??『あれは、大室櫻子と古谷向日葵の頭の中にある『大室撫子』という人物像から作り上げたもの。実際の彼女とは全く異なる存在ですので…』

綾乃「…??」

言っている意味が良くわからない。

??『まあ簡単に言えば、あれは今回の試練の為に作り出された『ダミー』の様なものなので、あなたが心配する事は何もないと思われます」

綾乃「ダミー、ね…」



104: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:23:44.99 ID:+CTp9RkZo
??『それより、試練にも大分慣れてきたようですが…』

綾乃「そうね。あまり慣れたくはないものだけど…」

??『ですが、これを終わらせなければ元の世界へは戻れませんよ』

綾乃「わかってるわよ!だからとっと次の試練へ行くわ」

??『ええ、ようやく半分ですよ。頑張って下さい』

やっぱり人の記憶を覗き見るというのは、いい気分ではない。
だからこそ、とっとと終わらせて、元の世界に戻らなきゃ!
そう意気込んで、私は『Ⅳ』と書かれたドアを開ける。



105: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:25:38.36 ID:+CTp9RkZo
~第四の試練・奈々とりせの章~

りせ「……」

奈々「待っていたぞ杉浦」

綾乃「会長!?それに西垣先生まで!」

りせ「………」

奈々「『私たちがここの番人よ、綾乃さん』と言っている」

綾乃「ええ、それは見ればわかりますけど…」

りせ「………」

奈々「『私を倒さなければ、会長の座は譲れなくってよ、綾乃さん』と言っている」

綾乃「いや別に会長の座とか今はいいですから、それより…」

奈々「ああ、試練だな」

りせ「…」

2人とも、さっきとは打って変わって、真面目な表情になる。
いや、正直、会長の表情はほとんど変わってないけど…。

奈々「第四の試練、それは…」

綾乃「…」ゴクリ



106: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:26:30.51 ID:+CTp9RkZo
奈々「私の実験に付き合ってもらう事だ!」

綾乃「…へ?」

奈々「より優れた実験結果を出せた場合、この試練を合格とみなす!」

綾乃「西垣先生、冗談はもうやめて下さい」

奈々「ちっ…、バレたか」

そんなのバレバレに決まってる。

奈々「じゃあ私と一緒に爆友に…」

綾乃「なりません!!」

奈々「全く、杉浦は頭が固いなぁ。仕方ない、松本…」

りせ「………」

奈々「今から杉浦を、第四の試練へと連れて行く」

綾乃「…はい」



107: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:27:22.80 ID:+CTp9RkZo
~謎の空間4~

チャイムの音、お昼休みの教室。

もはやお約束と言ってもいいくらい、試練はいつもこの風景から始まる。

綾乃「んっ…、よいしょ…!」

何とか全身に力を入れ、体を動かそうとするが、やはり一歩以上は進めない。

どうやら一つ試練を終える度に、一歩ずつ進めるようになるというのが、この世界のルールのようだ。

だけどそんなペースじゃ、向こうで泣いている歳納京子の元へなんて到底辿りつけない。

結衣「京子、行こう…」

そして今回もまた、船見さんが歳納京子を連れて行ってしまった…。



108: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:28:05.39 ID:+CTp9RkZo
…。

目に入ってくる光と共に、私の意識は覚醒していく。
さて、次は誰になりきるのだろうか…。

綾乃(ここは、理科室…?ということは…)

私は白衣を着ていた。どうやら今回は…

奈々(綾乃)「今回は、西垣先生になったみたいね」

辺りをよく見回してみてわかったが、ここは正確には理科室ではなく、理科準備室。
西垣先生がいつも怪しげな実験をしている場所だ。

奈々(綾乃)「理科準備室なら、どこかに鏡があると思うのだけど…」

少し部屋を物色して、戸棚から実験用の手鏡を見つける。

奈々(綾乃)「よし、これで…!」

鏡に自分の姿を映し、西垣先生の記憶、人格、話し方をコピーする。
この一連の作業にもだいぶ慣れてきた。

奈々(綾乃)「あとは試練を待つだけか…」



109: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:29:00.82 ID:+CTp9RkZo
ガチャ

りせ「……」

奈々(綾乃)「かいちょ…、松本、どうした…?」

りせ『奈々さん、また実験してたの?』

奈々(綾乃)「!?!?」

綾乃(か、会長が喋った…!?)

りせ『どうしたの?私、何か変なこと言った?』

奈々(綾乃)「い、いや…」

綾乃(そうか、西垣先生の姿になったから、会長の声が聞き取れるのね)

それにしても、先生は本当に会長と会話出来てたんだ。
なんだか驚き…。



110: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:29:39.96 ID:+CTp9RkZo
りせ『奈々さん』

奈々(綾乃)「え…?」

コテン

奈々(綾乃)「ちょ、ちょっと!どうしたの!?」

会長がいきなり私の肩にもたれ掛かってきた。

りせ『嫌だった…?』

奈々(綾乃)「いやその…」

先生と会長って、本当にそういう関係だったのね…。
で、でもっ、教師と生徒でそういう関係なのっていけないんじゃ…。



111: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:30:35.82 ID:+CTp9RkZo
りせ『奈々さん…』

奈々(綾乃)「…」

会長は、本当に幸せそうな顔で、私に触れてくる。
副会長としてこれまでずっと側に居たのにも関わらず、そんな顔を見るのは初めてで…。

綾乃(なんだか会長、かわいい…)

ナデナデ

気がつくと、私は会長の頭を撫でていた。

りせ『ん…』

会長は、目を閉じ、気持ちよさそうに私に撫でられている。

綾乃(会長だって女の子だもの、ちゃんと恋とかするのよね…)



112: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:31:07.20 ID:+CTp9RkZo
りせ『そういえば、奈々さん』

奈々(綾乃)「ん?」

りせ『今日、職員会議でしょ?』

奈々(綾乃)「え…」

職員会議…。
西垣先生はこれでもれっきとした教師。
ちゃんと会議にも出ないといけないのか…。

りせ『夕方4時からって行ってたよね?そろそろ行ったほうが…』

時計を見ると、時刻は3時55分。

奈々(綾乃)「そっ、そうだな…。じゃあちょっと行ってくるよ」



113: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:32:29.64 ID:+CTp9RkZo
~会議室~

教師「…と、いうわけで、来週からは遅刻防止強化週間が始まります。生徒会の子達としっかりと連携をとり…」ペラペラ

綾乃(当然だけど、話に全くついていけないわ…)

教師「ちょっと、西垣先生!ちゃんと聞いているんですか!?」

奈々(綾乃)「はっ、はひぃ!すいません…」

綾乃(怒られちゃった…)

でも、西垣先生の記憶と人格が頭の中に入っている状態で聞いてもわからないって事は、先生、普段から真面目に話を聞いてないって事よね…。
まあ、西垣先生らしいけど…。

教師「じゃあ、今日の会議は以上で終わりとなります」

一同『ありがとうございました!』

綾乃(ようやく終わった…。何一つ発言できなかったけど…)



114: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:33:01.30 ID:+CTp9RkZo
…。

??「西垣先生、ちょっといいですか?」

奈々(綾乃)「え…?」

会議が終わったあと、私は廊下で呼び止められた。
声をかけてきたのは、美人だけど性格は悪いと有名な、生活指導の先生だった。

女教師「私からあんまりこういう事言いたくないんですけどね、先生、やっぱりあの変な実験はそろそろ控えた方が良いですよ」

奈々(綾乃)「はぁ…」

女教師「先生方の間でもちょっとした噂になってるんですよ、西垣先生の実験には困ったものだ…って」

綾乃(ええと、もしかして私、怒られてるのかしら…?)

女教師「西垣先生もいい大人なんですから、もう少し教師としての自覚を…」クドクド

奈々(綾乃)「うぅ…」

自分で言うのもなんだが、私は普段、結構真面目な生徒だと思う。
だから、怒られるという経験がほとんどないので、正直これは結構堪える。



115: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:33:47.15 ID:+CTp9RkZo
女教師「それと西垣先生、もう一つ聞きたかったんですけど、生徒会長の松本さんとはどういう関係なんですか…?」

奈々(綾乃)「…どうしてその質問を?」

女教師「いえ、とある生徒が偶然、あなたと松本さんが休日に出歩いている所を目撃したと行っていたので…」

西垣先生、もう少し危機感持って下さい…。

奈々(綾乃)「松本とは、ただの教師と生徒の関係ですよ。その日は、生徒会室の備品の買出しに付き合っただけです」

女教師「そうですか…」

これでいいのよね?
先生と会長の交際なんて、明るみになったらマズいもの…。

女教師「では西垣先生、これからも節度ある振る舞いを期待していますよ。それでは…」

奈々(綾乃)「お疲れ様です…」

最後までイヤミな雰囲気を醸し出しながら、生活指導の先生は職員室へと戻っていった。



116: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:34:54.54 ID:+CTp9RkZo
~翌日・理科準備室~

りせ『奈々さん、最近実験しない…』

奈々(綾乃)「あ、ああうん…。たまには休息も必要だろう…!」

りせ『何かあった…?』

奈々(綾乃)「…大丈夫だ。何もない」ナデナデ

りせ『…ん』

会長を安心させようと、私はまた頭を撫でた。
いくら今は中身が杉浦綾乃とはいえ、やはり会長を傷つけたくはない。

りせ『奈々さん、最近してもらってないから、その…』

奈々(綾乃)「…なに?」

りせ『キス…して欲しい…』

奈々(綾乃)「」



117: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:43:36.02 ID:+CTp9RkZo
綾乃(きっ、ききききききキスぅうううう!?)

りせ『だめ…?』

奈々(綾乃)「いっ、いやその…」

キスってあのキスよね!?
魚じゃなくて口づけの方の!
しかも最近してないって事は、会長と松本さんって、もう何回も…。

りせ『じゃあ私から、する』

奈々(綾乃)「…」

会長の唇が、徐々に近づいてくる。

綾乃(そんな、私初めてなのに…)



118: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:45:52.10 ID:+CTp9RkZo
でも、今は西垣先生の体なわけだし、実質ノーカウントと言えるかも。
それに、これも試練の為なのだとしたら…。

綾乃(やるしかないのね…)

私は覚悟を決め、会長の口に自分の口を近づけていく。

綾乃(会長の髪、凄くサラサラ…。睫毛も長いし、本当に美人…)

いよいよお互いの唇が重なろうとする、その時だった…。

ガラッ

女教師「西垣先生、この前の会議の資料を―」

りせ「…」

奈々(綾乃)「…」

女教師「え…」

私達は、最悪の場面を最悪の人物に見られてしまった…。



119: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:47:57.93 ID:+CTp9RkZo
~会議室~

校長「…で、西垣先生と松本さんが交際をしている、と貴方は言いたい訳ですね?」

女教師「はい。理科準備室で目撃しました。これは立派な不順異性交友です!」

奈々(綾乃)「…」

キスしようとしている場面を目撃されてしまった私は、校長に呼び出され、ここに連れてこられた。
そもそも『異性』ではなく『同性』なのでは?というツッコミを入れられない程に、ピリピリとした雰囲気が漂う。

校長「西垣先生の方からも、何か言い分があるのではないですか?」

奈々(綾乃)「…松本は関係ありません。全ては私が勝手にやった事です。処分なら私に…」

校長「ふむ…」



120: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:51:43.02 ID:+CTp9RkZo
校長「ですがやはり生徒側の意見も聞いておかなければなりませんね…」

奈々(綾乃)「校長!」

校長「明日、松本さんを交えてもう一度話をしましょう。あなた方の処分はそれから決めます」

女教師「校長、2人が交際しているのは明らかです!他の生徒に悪影響を与えないためにも、一刻も早く何らかの策が必要かと…」

校長「これは重大な問題です。結論を急いでは、重大な過ちを犯しかねません」

女教師「うっ…」

校長「西垣先生も、それで良いですね?」

奈々(綾乃)「…はい」



122: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:53:54.91 ID:+CTp9RkZo
…。

女教師「西垣先生は、このままで良いんですか?」

奈々(綾乃)「え…?」

会議室前の廊下で、再び呼び止められる。

女教師「本当に松本さんの事を真剣に考えているのかと言っているんです」

奈々(綾乃)「それって、どういう…」

女教師「松本さんはまだ学生です。彼女には未来が、可能性があります。貴方と交際する事によって、それが潰れてしまうかもしれないんですよ?」

奈々(綾乃)「…」

女教師「それに、貴方達は女同士でしょう?」

奈々(綾乃)「―っ!!」



123: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:54:36.91 ID:+CTp9RkZo
女教師「同性愛を否定はしませんが、将来素敵な男性とめぐり合い、結婚し、子供を産んで家庭を持つ。それが『普通の幸せ』だとは思いませんか?」

奈々(綾乃)「…私にはわかりません」

女教師「…とにかく、貴方と交際する事によって、松本さんの未来が暗いものになってしまうかもしれないという事は覚えておいてください」

奈々(綾乃)「…」

女の子同士で付き合うという事。
よく考えれば、周囲からそのように思われるのは当然の事だった。
西垣先生と付き合う事が、会長にとっては不幸なのだろうか…?
それは、今の私には分からない。

綾乃(じゃあ、私と歳納京子だったら…?)



124: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:56:14.73 ID:+CTp9RkZo
今度は自分と歳納京子に当てはめてみる。
私は歳納京子の事が好き。
ずっと一緒にいたい。
でも、私達は女の子同士…。
結婚する事も出来なければ、子供を持つことも出来ない。
果たしてそれは、歳納京子にとって本当の幸せといえるのだろうか。

綾乃(わからない…)

今の私には、やっぱりその答えは出せそうにない。
これが、今回の試練…。

ズキッ…!

??『ええ、そうです』

またやってきた、『例の頭痛』と『声の主』

??『第三の試練の内容をお伝えします』

??『松本りせにとっての幸せを見つけ、彼女を守り抜いてください』



125: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:58:15.28 ID:+CTp9RkZo
~翌日・会議室~

校長「松本さん、貴方がここに呼ばれた理由はわかっていますね?」

りせ「…」コクン

昨日と同じ部屋に、私と、会長、そして生活指導の先生が呼び出されていた。

校長「では、最初に西垣先生のお話を聞きましょう」

奈々(綾乃)「…私の意見は昨日と同じです。全ては私が勝手にやった事。松本は関係ありません。処罰なら私一人に…」

これが今の私に出来る精一杯の抵抗。
何としても、会長だけは守り抜かないと。
試練の為でもあるけど、でもそれだけじゃなくて、やっぱり会長が大切だと思えるから…。

校長「そうですか。では次に、松本さんの意見を聞きたいと思います」

りせ「…」コクン



126: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 19:59:57.06 ID:+CTp9RkZo
校長「貴方と西垣先生が交際している、というのは事実ですか?」

りせ「…」

校長「理科準備室で西垣先生との不純な行為があったと聞きましたが、それは合意の上ですか?」

りせ「…」

校長「何か喋ってくれないとわかりませんよ…」

りせ「…」

綾乃(会長は喋っている。周りの人間がそれを聞き取れないだけ…)



127: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 20:00:58.55 ID:+CTp9RkZo
校長「何も言わないなら、西垣先生の意見に同意したと見なしますよ」

りせ「…っ!?」フルフル

そう、それでいい。
そうすれば、少なくとも会長だけは守り抜ける。

校長「では何か意見を言ってください」

りせ「……、………っ!」

無駄だ。
会長の声は、決して周りの人には聞き取れ…

りせ「…はっ、………んがっ、…きっ!!」

奈々(綾乃)「え…?」



128: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 20:01:24.32 ID:+CTp9RkZo




りせ「私は…、奈々さんが…、好きっ!!」







129: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 20:02:03.81 ID:+CTp9RkZo
女教師「しゃ、喋った…」

校長「ふむ…」

奈々(綾乃)「…」

そんな…。
会長の声が他の人に届くなんて…。

りせ「奈々さんの馬鹿っ!!どうして一人でカッコつけようとするの!奈々さんが居なくなったら、私…」

私は、会長がそんな風に声を荒げる様子を始めて見た。
もしかしたら、本当の西垣先生でさえ、こんな姿は見たことないかもしれない。

奈々(綾乃)「だが松本、私はお前の幸せを…」

りせ「私の幸せなんて…、勝手に決めないで!」



130: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 20:03:27.47 ID:+CTp9RkZo
りせ「私は、どうなってもいい。奈々さんと一緒に居られれば、それだけでいい…」

りせ「結婚できなくても、家庭が持てなくても、それでも…」

りせ「奈々さんと一緒に居られれば、私は幸せなの!」

何ていう事かしら…。
会長の方が、私よりも遥かに強かった。
そして、きちんと未来を見据えていた。

奈々(綾乃)「…校長、さっきの私の発言、取り消してもらってもいいですか?」

女教師「ちょっと、貴方まで何を…」

奈々(綾乃)「先生は黙っていて下さい!」

女教師「ひぃっ…!」



131: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 20:04:59.67 ID:+CTp9RkZo
奈々(綾乃)「私は、ずっと松本と一緒に居たい」

奈々(綾乃)「だから、処罰は2人で受けます。どんな結果だろうと、2人で受け止めていきます」

りせ「…」コクン

校長「…」

パチパチパチ

奈々(綾乃)「え…?」

校長「いやあ、素晴らしいものを見せていただきました!感無量です」

奈々(綾乃)「校長、一体どういう事ですか…?」



132: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 20:06:17.36 ID:+CTp9RkZo
校長「どうもこうも、私は最初からあなた方を罰する気なんてありませんでしたよ。ただ試していただけです」

奈々(綾乃)「試すって…?」

校長「いやあ、やはり学校の特性上、女の子同士の交際というのが非常に多いのですよ。ただ、中には遊び半分な子達も結構居るので、あなた方の覚悟を試したのです」

女教師「こ、校長…?一体何を仰られているのか…」

校長「あなたもここの教師だというのに、まだわかってないのですか?」

校長「私は『百合』というものを愛でるのが心底好きでして、女の子同士の真剣なお付き合いならば、全力で応援したいと思っていますよ」ニコッ

奈々(綾乃)「は、はははは…」

何だか凄い展開になってしまったけど、とにかく救われたみたいね。



133: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 20:07:28.99 ID:+CTp9RkZo

りせ「…」

りせ「………」ニコッ

横を見ると、会長も珍しく微笑んでいた。

ズキッ…!

綾乃(…っ、またこの頭痛…)

どうやら試練は無事終了したらしい。



134: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 20:08:23.34 ID:+CTp9RkZo
…。

りせ「…」

奈々「『ご苦労様、綾乃さん』と言っている」

綾乃「はい、ありがとうございます」

さすがに元の体に戻ってしまっては、会長の声を聞くことは出来ないようだ。

奈々「どうだった、今回の試練は?」

綾乃「私、女の子同士で付き合うって事がどれだけ大変な事なのか、今まで全く考えてませんでした…」

奈々「ふむ…」



135: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 20:09:23.90 ID:+CTp9RkZo
綾乃「でも、今回の試練でそれが分かった。どんなに大変でも、アイツとずっと一緒に居たいって思えたんです…」

奈々「そうか。杉浦なりに何かを掴んだようだな」

綾乃「…はい」

りせ「…」

奈々「『女の子同士で付き合うのは、何も悪いことばかりではない。楽しいこともきっと沢山ある。だから頑張って…』だそうだ」

綾乃「そうですね。ありがとうございます」

会長から激励の言葉(?)を貰い、私は試練の間へと戻っていった。



136: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 20:10:47.81 ID:+CTp9RkZo
以上、淡々と投下させいただきましたが、これにてあかり編、ちなつ編、ひまさく編、奈々りせ編が終了です。

残る試練はあと2つ。

あと、本文中に描写はありませんが、校長は女です。



137: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 20:12:15.31 ID:kKGMrYkAo
女でも校長だからおばさんなんだろうな



144: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 21:42:47.04 ID:+CTp9RkZo
~試練の間~

??『お疲れ様でした。残る試練はいよいよ2つですね』

綾乃「ええ、このペースでどんどん行くわよ!」

??『大分慣れてきてらっしゃるようですね、フフ…』

何だろう?今の意味深な笑みは…。

??『本当に大変なのはここからですよ、杉浦綾乃』

綾乃「え…?」

??『次の試練は、貴方にとって恐らく一番過酷なものとなるでしょう』

綾乃「…」

??『さあ、覚悟を決めたら次の試練へと、どうぞ』

怖いけど、試練を乗り越えない事には何も始まらない。
恐る恐る、私は『Ⅴ』と書かれたドアを開けた。



145: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 21:43:29.21 ID:+CTp9RkZo
~第五の試練・千歳の章~

千歳「綾乃ちゃん、ようやくココまで来たんやね」

綾乃「千歳…」

一番過酷と言われていただけに、千歳の顔を見て少しホッとする。

千歳「ようやく…言えたんやな」

綾乃「うん…」

千歳には相談に乗ってもらったし、いつも助けられていた。
だからこそ、千歳の為にも早く元の世界に戻りたいと思った。



146: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 21:44:06.37 ID:+CTp9RkZo
千歳「綾乃ちゃん、ゴメンな…。うちかて、本当はすんなり歳納さんと結ばれて欲しいんやけど…」

綾乃「試練、だものね…」

千歳がコクリと頷く。

綾乃「千歳、本当に今までありがとう。あなたは私の一番の親友よ」

千歳「ありがとな、綾乃ちゃん」

2人の間に、もう言葉は要らない。
本当に千歳を大切に思っているからこそ、ここではなく、元の世界で千歳にありがとうを言いたい。

千歳「それじゃ綾乃ちゃん、今からあなたを第五の試練へお連れします」



147: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 21:44:44.53 ID:+CTp9RkZo
~謎の空間5~

もうこの光景を見るのは何度目になるのだろうか。

何度見ても心が痛む。

それは、歳納京子が泣いてるから…?

それとも、船見さんに嫉妬しているから…?

きっとその両方なのだろう。

そして私は気づいてしまった。

この光景を見ても、何の疑問も抱かない自分が居ることに。

だって、私は知っているのだ。

この光景の意味を。

何故歳納京子が泣いているのかを、クラスの皆に白い目で見られているのかを。

そう、思い出した、後悔があった事を。

でも私は、前に進まなければならない。

例え一歩ずつしか進めなくても、船見さんに先を越されてしまっても、それでも私は試練を乗り越えなければいけないのだ…。



148: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 21:45:33.22 ID:+CTp9RkZo
…。

目を覚ますと図書室にいた。
自分の姿を確認してみると、七森中の制服に、ふわふわのショートカット、そしてどうやら眼鏡をかけているようだった。

綾乃(これは…千歳…?)

千歳「お待たせー、今生徒会終わったでー♪」

綾乃(あれ、千歳が普通に居る…?という事は…)

どうやら私は千鶴さんになったようだ。

千歳「ん、どしたん千鶴?慌てたりして」

千鶴(綾乃)「いや、ええと…」

綾乃(どうしようどうしようどうしよう東照宮…!どこかに鏡は…)

ふと、自分のこめかみに手を当ててみる。

綾乃(そうだ!眼鏡で何とかならないかしら…)

眼鏡を外し、レンズに自分の顔を映し出そうとしてみる。

クラッ

綾乃(うっ、そうよね…。眼鏡かけてるくらいなんだから、外しちゃったら何も見えないわよね)



149: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 21:46:11.92 ID:+CTp9RkZo
じゃあ千歳の眼鏡はどうだろうか。
今度は千歳の眼鏡のレンズに自分の姿を映してみる。

千鶴(綾乃)「…」ジーッ

千歳「ど、どしたん千鶴…?顔近いで…」

その瞬間、千鶴さんの記憶、人格、喋り方などが頭に入り込んでくる。

千鶴(綾乃)「ごめん姉さん、もう大丈夫」

千歳「ほな、一緒に帰ろうか」

千鶴(綾乃)「うん」

私のなりきりスキルも、だいぶ板についてきたわね!



150: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 21:46:45.02 ID:+CTp9RkZo
~帰り道~

千歳「…んでな、今日も綾乃ちゃんと歳納さんが…」ドクドク

千鶴(綾乃)「姉さん、鼻血出てる」フキフキ

千歳「ありがとなー千鶴」

千鶴(綾乃)「ううん、気にしないで」

千歳はいつも通り、私と歳納京子の事を楽しそうに話していた。

千鶴(綾乃)「そういえば姉さん、ずっと気になってたんだけど…」

千歳「ん?」

千鶴(綾乃)「どうして姉さんは、杉浦さんと歳納の妄想をするのが好きなの?」



151: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 21:47:24.46 ID:+CTp9RkZo
これは、もともと私がずっと疑問に思っていた事だった。
私が聞いてもなかなか教えてくれなかったのだが、千鶴さんになら教えてくれるかもしれない。
いい機会だし聞いてみたくなった。

千歳「うちな、まだ綾乃ちゃんと仲良くなりたての頃、正直言って不安やったんや…」

千鶴(綾乃)「不安…?」

千歳「綾乃ちゃん、人に弱みを見せようとしない子やから、悩み事とかあっても相談してくれへんし、うち、信頼されてないんじゃないかなって思って」

千鶴(綾乃)「そんなこと…!」

そんな事、ある訳無いのに…。

千歳「わかっとるって。でな、初めて綾乃ちゃんと歳納さんが話しているのを見た時、その一生懸命な姿見て、うちは凄く応援したくなったんや」

千歳「そしたら頭の中で、綾乃ちゃんと歳納さんの事考えてるうちに、次第に妄想するようになっていった…。という訳や」



152: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 21:48:07.54 ID:+CTp9RkZo
千鶴(綾乃)「そうだったんだ…」

千歳「綾乃ちゃんは、ほんまに一生懸命でええ子や。だから、そんな綾乃ちゃんに、うちは何としても報われて欲しいんよ」

千鶴(綾乃)「…杉浦さんも、姉さんの事、凄く大切な友達だと思ってる。絶対」

千歳「そうかな?だとしたら嬉しいわぁ」

本当よ千歳。
これは私の心からの思い。
今までありがとう千歳、私、絶対幸せになるから…



153: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 21:49:09.62 ID:+CTp9RkZo
…。

翌日、私は普通に授業を終え、帰宅した。
今日の生徒会は忙しくなるらしく、千歳には先に帰ってて欲しいと言われた。
千歳の家は何回か遊びに来ているので、今までの試練に比べるとだいぶ勝手がわかるので、楽だった。
今回が一番過酷だって脅された時は、どうしようかと思ったけど…

綾乃(今回の試練、結構楽勝かもしれないわね♪)

あいつは、私と千歳の絆を甘く見ていたに違いない。

綾乃(すぐに試練を終わらせて、ビックリさせてやるんだから!)

だが、後に私は思い知らされる事になる。
この試練が、今までで一番過酷だと言われた、その理由を。



154: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 21:49:36.50 ID:+CTp9RkZo
千歳「ただいまー」

千鶴(綾乃)「あ、姉さん、お帰り」

千歳「うん…」

どうしたのだろう。
千歳の様子が少しおかしい。

千歳「先、お風呂入ってくるなー」

千鶴(綾乃)「あ、うん…」

何だか、少し元気が無いような気がする…。



155: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 21:50:03.99 ID:+CTp9RkZo
お風呂からあがってきて、夕食の時も千歳はずっと様子がおかしかった。
いつものように喋りかけてはくるけど、その会話はどこかぎこちなく、明らかに無理をしているようだった。
そんな様子のまま、夜は更けていき…

千歳「…そろそろ寝よかー」

千鶴(綾乃)「…うん」

私と千歳は、どこかぎこちない空気のまま、一緒の布団に入った。



156: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 21:51:01.75 ID:+CTp9RkZo
~寝室~

千鶴(綾乃)「姉さん、今日はどうしたの?帰ってきてからずっと元気ないけど…」

千歳「…やっぱり千鶴にはバレバレやな」

仮に千鶴さんじゃなかったとしても、千歳が元気ない事には気づくと思う。
それ程に、今日の千歳はおかしいのだ。

千歳「今日な、綾乃ちゃんに相談されたんや…」

千歳「歳納さんに…告白するって…」

千鶴(綾乃)「え…?」

今日の日付を思い出してみる。
○月×日。
歳納京子に告白する前日、千歳に相談した日だった。



157: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 21:51:47.68 ID:+CTp9RkZo
千歳「うちな、おかしいみたいなんや…。あんなに綾乃ちゃんに結ばれて欲しいって思っとったのに…」

千歳「ようやくその夢が近づいてきた今、どうしようもなく胸が苦しいんや…」

千鶴(綾乃)「姉さん…」

千歳「気づいてしまったんや、うちな…」




千歳「綾乃ちゃんの事、好きみたいや…」



158: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 21:52:48.00 ID:+CTp9RkZo
ドクン

千鶴(綾乃)「すっ、好きって…」

千歳の突然の告白に、胸が高鳴る。

千歳「うん、恋人としての好き…。綾乃ちゃんの事、一人の女の子として好きみたいや…」

そんな…、千歳が私の事を…?

千歳「うち…ダメな子やな…。あんなに綾乃ちゃんの事、応援するって言っとったのに…」

千歳「綾乃ちゃんが歳納さんの所へ行ってまうって思うと、胸が苦しくて張り裂けそうなんやっ…!!」ポロポロ

千歳の泣く姿というものを、私は初めてみた。

千歳「うわああんっ…!!千鶴っ!千鶴ぅ…!!」

千鶴さんの名前を呼びながら、ひたすら声をあげて泣いている。
そんな千歳に、私は何もしてあげられず、ただ抱きつかれるだけだった…。



159: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 21:53:57.23 ID:+CTp9RkZo
…。

千歳「…」Zzz

千歳はひとしきり泣いた後、まるでゼンマイの切れたおもちゃのように、疲れ果てて寝てしまった。

綾乃(千歳…)

私が歳納京子に告白しようと浮かれている間、千歳はこんなにも苦しんでいた。
そんな事、これっぽっちも知らずに、本当に私は呑気だったと思う。
千歳が私の事を好き。
親友だとか言っておきながら、私は何一つ彼女の事をわかってあげられていなかったのだ。
そして、そんな千歳を苦しめているのは、紛れも無く私自身…。

綾乃(千歳…、そんな苦しい気持ち抱えて、どうして私の前では普通に笑顔でいられるのよ…?)

千歳に無理をさせていた。
千歳をただひたすらに苦しませていた。
そんな自分が、ただ、ただ、もどかしい。
でも、どうすれば…?



160: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 21:54:31.83 ID:+CTp9RkZo
ズキッ…!

??『ようやく今回の試練の過酷さがわかりましたか?』

千鶴(綾乃)「…っ!」

例の頭痛と共にあいつの声が聞こえる。
私は、この声の主に対して明らかな嫌悪感を抱いていた。
だって、今回の試練はあまりにも酷すぎる…。
これじゃ千歳が…

??『ですが、彼女を苦しめている最大の原因は、貴方自身でしょう?』

千鶴(綾乃)「うるさいっ…!それ以上言うと…」

??『まぁまぁ、落ち着いてください。別に私は喧嘩を売りにきたわけではありません』



161: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 21:55:06.48 ID:+CTp9RkZo
??『まず最初に、一つ忠告しておこうと思いまして』

千鶴(綾乃)「忠告…?」

??『この第五の試練では、今までとは異なり、貴方のここでの行動が、直接、貴方の『元いた世界』に反映されます』

千鶴(綾乃)「それって…」

??『わかりやすい例で言えば、この世界で貴方と歳納京子が結ばれないように邪魔をすれば、実際のあなたの世界でも2人は結ばれなくなります』

??『その事を踏まえた上で、今回の試練の内容を伝えます』

??『池田千歳を…、幸せにしてみせなさい』



162: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 21:55:48.68 ID:+CTp9RkZo
…。

生徒会室の隣の空き教室で、私はただボーっと座っていた。
隣では、もうすぐ『私』が歳納京子に告白する筈だ…。

千鶴(綾乃)「どうしたらいいのかしら…」

『私』が告白しようとしているのを邪魔する…?
でも、今回の試練では、私の行動がそのまま元の世界に反映されてしまう。
そしたら、私は歳納京子と結ばれない。
今まで受けてきた試練も、全て無駄になってしまう。



163: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 21:56:15.53 ID:+CTp9RkZo




千歳『綾乃ちゃんが歳納さんの所へ行ってまうって思うと、胸が苦しくて張り裂けそうなんやっ…!!』




…千歳の言葉を思い出す。



164: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 21:57:10.72 ID:+CTp9RkZo
確かに、一度は歳納京子と結ばれたいと思った。
その為なら、どんな試練も乗り越えてみせると誓った。
でも、それは千歳にこんな辛い思いをさせてまで、叶えるべきものなのかしら…?
千歳は私の一番の親友。
どんな時も、私の側で微笑みかけて、励ましてくれた。
そんな千歳を泣かせてまで、私は歳納京子と結ばれたいの…?

千鶴(綾乃)「…そんなの、嫌に決まってるじゃないっ…!」

気がつくと、私は席を立っていた。
試練とか、もう今は関係ない。
とにかく千歳を悲しませたくはない。
その為に、私が我慢すれば済むのだったら…。



165: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 21:58:09.04 ID:+CTp9RkZo
~生徒会室、入り口前~

京子「綾乃、もしかして何か悩んでる…?」

綾乃(過去)「え…?」

生徒会室で、『私』と歳納京子の姿を見つける。
今まさに、『私』が告白しようとしていた。

綾乃(過去)「あのね、歳納京子…」

臆病な『私』の事だから、このドアを開けて千鶴さんの格好をした私が入っていけば、それだけで告白を止められるだろう。
それで、少なくとも千歳は悲しまずにすむ。
私の告白は、なかった事になっちゃうけど…。

綾乃(…行くのよ私)

震える手をそっとドアにかけ、開けようとした、その時だった…。

千歳「あかんで、千鶴…」



166: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 21:58:43.63 ID:+CTp9RkZo
千鶴(綾乃)「姉さん…!」

千歳「そんなことしたらあかん。こっちに来るんや…!」

千鶴(綾乃)「いやっ、離してっ!」

千歳は私の手を掴み、そのまま無理やり私を隣の教室へ連れて行く。



167: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:00:16.65 ID:+CTp9RkZo
…。

千歳「なんであんなことしやんや…?」

千鶴(綾乃)「だって姉さん、あんなに辛そうだったから…。杉浦さんと歳納の邪魔をすれば、姉さんは苦しまずに済むと思って…」

千歳「千鶴のアホ!そんなんしても…」

千歳「そんなんしても、うちは喜ばんよ…」ポロポロ

千歳の瞳から涙が零れ落ちる。

千鶴(綾乃)「だって…、こんなのってないよ…!姉さんは泣くほど辛い思いしてるのに、杉浦さんと歳納だけ幸せになるなんて…」

千歳「…もうええよ千鶴、いや…」




千歳「綾乃ちゃん…なんやろ?」



168: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:01:01.57 ID:+CTp9RkZo
千鶴(綾乃)「なっ、ななな何を…!?」

千歳「うまく千鶴のフリしてたみたいやけど、うちにはバレバレやで?」

千鶴(綾乃)「千歳…」

千歳「大好きな綾乃ちゃんの事やもん、すぐにわかるって」

大好き…。
その言葉に、胸がチクリと痛んだ。

千鶴(綾乃)「信じられるの…?私が、杉浦綾乃だって…」

千歳「最初気づいた時はうちも信じられんかったよ。世の中、不思議な事もあるもんやなぁって」

千歳は、目に涙を浮かべながら、それでも私に微笑みかけてくる。



169: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:02:20.12 ID:+CTp9RkZo
千鶴(綾乃)「どうして…」

千歳「ん?」

千鶴(綾乃)「どうして笑ってられるのよ…!!私は…、私は千歳をこんなにも傷つけたのに…」

千歳「うーん…、確かにちと辛いけど、別に綾乃ちゃんのせいじゃあらへんもんなぁ」

この池田千歳という女の子は、こんなに苦しい思いをしながら、それでも私に非はないと言い張るのか。

千鶴(綾乃)「でも、私は千歳の気持ちを知ってしまった…。それを知りながら、歳納京子と付き合うなんて、私には出来ない…」

千歳「綾乃ちゃん…」

千鶴(綾乃)「今からならまだ間に合う!もう一人の『私』が告白しようとしているのを邪魔して、そうすれば千歳は…」

パァン!

千鶴(綾乃)「え…?」



170: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:03:46.90 ID:+CTp9RkZo
頬に強烈な痛みが走る。
それが千歳に叩かれたのだという事に、数秒経ってから気づいた。

千歳「綾乃ちゃん…!綾乃ちゃんはホンマにアホやっ…!!」

千歳「そんなんでホンマにうちが喜ぶと思ってるんか!?うちは…」

千歳「うちはなぁ…、例えうちの想いが実らんとも…、綾乃ちゃんに幸せになって欲しいんや…!」

千鶴(綾乃)「千歳…」

千歳「なぁ綾乃ちゃん、一つ覚えておいて欲しいんや」

千歳が、それまでとは変わって、穏やかな口調で語りだす



171: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:05:07.24 ID:+CTp9RkZo
千歳「別にうちの事だけじゃあらへん。世の中な、幸せになろうと思ったら、時に他の人が傷つく事もあるんや」

千歳「ホンマの幸せってのはな、誰かの涙、不幸、悲しみの上に成り立っとる。それを受け入れられる人にしか、ホンマの幸せは掴めんのや」

その言葉は、私の心に深く突き刺さった。

千歳「うちは、綾乃ちゃんはホンマの幸せを掴める人やと信じとる」

千鶴(綾乃)「千歳…あなたは…」

ズキッ…!

ああ、また例の頭痛がやってきて、意識が遠のいていく。

千鶴(綾乃)「どうしてそこまでして、私を助けてくれるの…?」

こんな形で試練が終わってしまうなんて…、私は認めない…!

千歳「それはな、綾乃ちゃん…」

私は、千歳を幸せにする事なんて、これっぽちも出来なかったのに…!



172: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:05:38.25 ID:+CTp9RkZo




千歳「綾乃ちゃんのシアワセが、うちのシアワセやから」ニコッ






173: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:06:06.42 ID:+CTp9RkZo
…。

綾乃「…うっ、うっ…」ポロポロ

目が覚めると泣いていた。
本当に泣きたいのは千歳の筈なのに、涙を堪える事が出来ない。

千歳「綾乃ちゃん、おかえり」

そんな私を、千歳がそっと抱きしめてくる。

綾乃「千歳ぇ…。ごめんっ…、ごめんなさいっ…!!」

千歳「ええよ、綾乃ちゃん…」

綾乃「私、絶対幸せになる…、歳納京子と幸せになるっ…!」

千歳「それでええんや、綾乃ちゃん」



174: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:06:53.79 ID:+CTp9RkZo
綾乃「千歳のぶんまでっ…、絶対、幸せになるから…!」

千歳「うん…、約束やで。破ったら罰金バッキンガムや…」

泣きじゃくる私を、千歳はいつまでも抱きしめてくれた。


池田千歳。
私の一番の親友。
この子を泣かせてしまった事、辛い思いをさせてしまった事を、私は絶対に忘れない。
その痛みを受け止めて、私は歳納京子を迎えに行く。
約束する、千歳。
私、必ず幸せになるから…。
だから、これからも…。


綾乃「私の、一番の親友でいてね…!!」

千歳「…もちろんや!」



175: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:08:12.37 ID:+CTp9RkZo
~試練の間~

??『お疲れ様です。ようやく最後の試練ですね』

綾乃「…」

もうこの声と話す内容なんて、何もない。
最後の試練を終えて、歳納京子に会いに行く、それだけだ。

??『私から最初に伝えておきます。第六の試練には、これまでの様に具体的な指令がありません』

??『そして、これまでの様に誰かになりきってもらうという事もありません。あなたには、とある人物の記憶をひたすら見てもらいます』

綾乃「…なんだっていいわ。私は歳納京子に会いに行く。その為ならどんな試練も受ける」

??『そうですか…。では、最後の試練、頑張って下さい』

??『貴方が、本当の幸せを掴めますように…』



176: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:08:54.62 ID:+CTp9RkZo
~最後の試練・結衣の章~

綾乃「…最後の『番人』はやっぱりあなたなのね、船見さん」

結衣「…」

あまりに予想通りすぎる展開に、もはや笑いさえこみあげてくる。

結衣「…綾乃はさ、ずっと悔やんでいるんだろ?」

結衣「あの時、何も言えなかった事を…」

綾乃「…ええ、そうね」

やっぱり、この試練は…。



177: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:09:44.96 ID:+CTp9RkZo
結衣「綾乃も気づいているんだろ?今までの試練の意味を…」

綾乃「…ええ」

結衣「だったら代えてみせてよ。その過去を…。後悔を…」

もとよりそのつもりだ。

結衣「それじゃあ綾乃、今からあなたを最後の試練へとお連れします」

綾乃「…」

意識がどこか遠くへ運ばれていく。
試練へと飛ばされる間際、船見さんの声が聞こえた気がした。




結衣「綾乃、京子と『私』をよろしくね…」



178: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:10:20.95 ID:+CTp9RkZo
~謎の空間6~

京子「ううっ、もうやめてぇ…、あやまるからぁ…、もうやめてよぉ…」ポロポロ

歳納京子が泣いている。

待ってて、今迎えに行くから。

綾乃「んっ…!!んしょっ…!!」

全身に力を込めて、前へ進もうとする。

だけどやっぱり、一歩しか踏み出すことが出来ない。

ふと前を見て、泣いている歳納京子までの距離に絶望する。

これまでの五つの試練を終えてみても、歳納京子の元へはまだ遥かに距離があった。

どう頑張っても、辿りつけない程の距離…。

綾乃「そんな…」

どうすれば…、どうすれば歳納京子の元へ辿り着けるの…?



179: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:11:11.75 ID:+CTp9RkZo
…。

京子「ゆいー!帰ろうぜー!」

結衣「お前元気だな。今日も授業殆ど寝てただろ」

京子「えへ☆」

結衣「可愛い顔して誤魔化すな!」ゴチン

京子「いてっ…」

放課後、私と京子はいつもの様にくだらないやり取りを交わしながら、帰り支度をしていた。
季節は6月。
私も京子も中学一年生で、部活には入っていない。
京子は最初、吹奏楽部に入っていたけど、どうしても楽譜が読めるようにならかったらしく、1ヶ月で辞めた。
だからこうして2人とも、帰宅部として貴重な青春の時間を浪費しているのだ。



180: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:11:43.30 ID:+CTp9RkZo
~帰り道~

京子「ねえ結衣、帰りにクレープ買って行っていい?」

結衣「お前昨日も買っただろ!?よくお金あるな…」

京子「心肺ゴム用!じゃ、さっそく!」バビューン

結衣「おいこら、待てって…」

…。

クレープを買い、近くのベンチで座って食べる。

京子「あー、結衣のそれうまそー!一口ちょうだい!」

結衣「えー、やだよ。京子も同じのにすれば良かっただろ」

京子「結衣の見てたら食べたくなったの!」><

結衣「…じゃあ一口だけな」

京子「わーい!結衣大好き!」

結衣「だっ、大好きとか言うな!恥ずかしい///」



181: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:12:44.23 ID:+CTp9RkZo
京子「それにしても、私たちこんなことしてていいのかなぁ?」

結衣「どうしたんだよ急に…」

京子「いやー、だって私たちって中学生じゃん?青春真っ盛りなこの時期に、部活にも入らずダラダラしてても良いものかと…」

結衣「…確かに」

でも私は、このままでもいいかなと思っていた。
特に刺激があるわけではないけど、京子が居て、毎日放課後はこうやってのんびりと過ごして。
そんな日々が、結構気に入ったりしていた。

結衣「さ、もう帰るぞ」

京子「ええー、まだ明るいじゃーん!」

でも、そんな幸せな日々も、長くは続かなかった…。



182: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:13:42.39 ID:+CTp9RkZo
~翌日・昇降口~

結衣「ん?京子、どうかした?」

京子「あ…、なっ、なんでも無いよ…!」アセアセ

京子「えっと…、洗濯しに持って帰った上履き、忘れちゃったみたい!職員室でスリッパ借りてくるから、先教室行ってて!」

そういうと、京子は素足のまま廊下を走っていった。

結衣「…?、変な京子…」



183: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:14:24.61 ID:+CTp9RkZo
~教室~

綾乃「はい、これアンケート。歳納さんにも渡しておいて」

結衣「ご苦労様、杉浦さん」

学級委員の杉浦綾乃。
いかにも真面目そうなイメージで、正直ちょっと近寄りがたいところもある。
京子は、仲良くなってみたいって言ってたけど…。

京子「結衣ー、お待たせ!スリッパ借りてきたよー!」パタパタ

結衣「全くそそっかしいな京子は。それともう少し静かに歩け」

スリッパが珍しいのか、歩きながらわざとパタパタと音を立ててくる。

綾乃「とっ、歳納さん…、おはよう…///」モジモジ

京子「お、あやのー!おっはよー!朝から綾乃に挨拶してもらえるなんて、ツイてるなぁ」

綾乃「なっ、何言ってるのよもう!!///」

あ、今の杉浦さんはちょっと可愛かったかも…。



184: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:14:54.26 ID:+CTp9RkZo
~休み時間~

京子「ふー、今日のバスケは疲れたー」

結衣「お前、ほとんどドリブルで遊んでただけだろ」

京子「なにをー!ってあれ…?」

結衣「どうした京子?」

京子「制服が…無い…」

結衣「え…?」

京子「あっれー、おっかしーなー。どこにしまったけ?」

京子がガサゴソと自分の荷物を探す。

京子「ごめん結衣、ちょっと見つからないから先生の所に言ってくる…」

結衣「う、うん…」

…。



185: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:15:47.91 ID:+CTp9RkZo
~給食の時間~

京子「いっただきまーす♪今日はちくわの磯部揚げ~!ってあれ…?」

結衣「どうした…?」

京子「箸が割れてる…」

結衣「え…?」

京子「何でだろ…?鞄の中で割れちゃったのかな?」

結衣「何だそれ…。今日、どうやって食べるんだよ?」

京子「うーん、どうしよう…」

??「京子ちゃん、割り箸いっぱい持ってるから一つあげるよ。これ使って」○ッカリーン

京子「お、サンキュー」

結衣「ねえ京子、今の誰…?」

京子「え、そういえば誰だろ…?」

このクラスに居る筈のない、赤いお団子の懐かしい女の子だったような気がするのだけれど…。



186: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:16:17.92 ID:+CTp9RkZo
~帰り道~

京子「~♪」

結衣「…」

京子は帰り道もジャージを着ていた。

結衣「お前、制服は?」

京子「えっ?え~と…、結局見つからなかった!」アハハ

結衣「…京子、お前何か隠してるだろ?」

京子「えっ!?そ、そんな事…」ギクゥ

結衣「ちょっと鞄の中見せてみろ」

京子「ちょ、ちょっと!」



187: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:16:58.55 ID:+CTp9RkZo
ガサッ

結衣「!?」

京子「…」

京子の鞄の中から出てきたのは、無くしたはずの制服だった。
ただその姿は、見るも無残な程にボロボロに切り刻まれていた。

結衣「京子、これ…」

京子「…」

もう間違いない、これは…。

結衣「いじめ…」

京子「…」

何てことだ。
京子がいじめに合うなんて…。



188: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:17:40.35 ID:+CTp9RkZo
結衣「京子、先生には相談したの?」

京子「…」フルフル

結衣「どうして…!」

京子「だいじょうぶ…だから…」

京子「こんなのすぐに終わるよ。いちいち揉め事にしたくないし」

結衣「そんな…」

だけど、後に私達は思い知ることになる。
こんなの、まだまだ序の口に過ぎなかったという事に。



189: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:18:25.86 ID:+CTp9RkZo
…。

それから、京子へのいじめはどんどんエスカレートしていった。
クラス中から無視されるのは当たり前。
何か物を持っていくたびに壊され、隠され、机には落書きだらけ。
まともな学校生活を送る事さえ困難な状況だった。

京子「こんなの大した事ないって!私は余裕だからさ~♪」

京子はそう言って強がるけど、私は見てられなかった。
犯人は未だに不明だけど、どうもクラスの中で主犯格がいるらしい。
クラス中の生徒は京子の事を無視し、それに逆らった者もまた無視される。


この状況下でもずっと京子と一緒に居続けた私もまた、当然いじめのターゲットにされた。

京子「結衣ごめん…、私のせいで…」

結衣「何言ってんだよ京子。私なら気にしてないよ」

そう、私なんかよりも、京子が受けているいじめの方がよっぽど残酷だ。
こうして私達は、クラスから、学校から、切り離された状態になった。



190: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:18:54.71 ID:+CTp9RkZo
…。

京子「おはよー」

モブ「…」

結衣「おはよう京子」

モブ2「…」

私達が登校し、挨拶をするだけで、周囲の人が白い目で見てくる。
完全に、腫れ物扱いだった。

綾乃「…」

私達は、クラスで完全に浮いていた。



191: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:19:24.19 ID:+CTp9RkZo
~昼休み~

京子「結衣ー、今日は帰りどこ行く?」

結衣「そうだな、今日は…」

ドゴッ

女子A「あー、もー我慢できねー!!」

京子「ひっ…!!」

突然、クラスメートの一人が京子の机を蹴り飛ばした。

女子A「あんたら一体何なんだよ!?影で色々やっても全く効果なしかよ!?」

いよいよ、いじめの主犯格のお出ましだった。

女子A「ああ!?何とか言ったらどうなんだよ?歳納サン!!!」

京子「いっ、痛いよ…、やめて…!!」

そいつが京子の髪を思いっきり引っ張る。



192: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:19:53.88 ID:+CTp9RkZo
女子A「うるせえ!!」

ドガッ

京子「ああっ…!!」

京子がロッカーに叩きつけられる。

京子「や…、やめて…、どうしてこんなことするの…?」

女子A「ああ!?あんたムカつくんだよ!いつもいつも調子乗りやがってさ!何それ?キャラ作ってるわけ?」

バシンッ

京子「ううっ…痛いぃ…」

京子の顔面を本気で叩いてくる。

女子B「キャハハ!!その顔傑作☆」

女子C「あたしも混ぜて~♪」

主犯格の連れの女子生徒達も混ざってくる。



193: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:20:26.96 ID:+CTp9RkZo
女子B「だいたいおかしいと思わないの?いい歳して『ミラクるん』とかさー。マジキモいんですけどー♪」ボカッ

京子「ひぃっ…!」

女子C「つかこいつ絶対自分の事可愛いとか思ってるよねー?性格最悪っしょ…」ドゴッ

京子「ううぅ…」

結衣「おい、もうやめてくれよ!京子が何したって…」

女子A「…ああ!?」



194: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:21:16.67 ID:+CTp9RkZo
リーダー格の女に、凄い形相で睨まれる。

女子A「おめーもさー、うぜーんだよ船見結衣!」ボカッ

結衣「うわあぁっ…!!」

思い切り殴られ、私は床に叩きつけられた。

女子A「正義の味方気取りか知らねーけど、一人だけ歳納と仲良くしちゃってさー。もう少しクラスの空気読めよなぁ!」ドゴッ ボカッ

結衣「うっ…、うわあぁぁっ…」

激しく殴りつけられる。
悔しいけど、力では叶いそうにない。

京子「やめてぇ!やめてよぉ!ゆいがぁ…!」

女子B「はいはい、歳納ちゃんは自分の心配だけしててねぇ♪」ボカッ ドゴッ

京子「ううっ…!!」



195: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:21:55.91 ID:+CTp9RkZo
悔しい…。
情けない…。
京子を守りたいのに、自分の痛みを堪えるだけで精一杯だった…。


京子「ううっ、もうやめてぇ…、あやまるからぁ…、もうやめてよぉ…」ポロポロ

誰でもいい。
誰か、助けてくれ…。
私の事はいいから、せめて京子だけでも…。
誰か…。

モブ「…」

モブ2「…」

クラスの皆は、そんな私達を遠くから白い目で見ているだけ。
それもそうか、こんな状況で身を挺して助けにくるなんて、とんだ物好きだよな…。

キーンコーンカーンコーン

あまりの痛みに意識が飛びそうになる中、昼休みの終わりを告げるチャイムを聞いた。



198: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:25:26.04 ID:+CTp9RkZo
~????~

これが、私の後悔。

いじめられている歳納京子と船見さんを、助けてあげられなかった事。

我が身可愛さに何も出来なかった事を、私はずっと悔やんでいた。

この数週間後に、担任の先生の介入によっていじめはなくなり、主犯格の3人は停学処分。

歳納京子と船見さんは、色々な事を乗り越え、本当に長い時間をかけて再びクラスへ溶け込んでいった。

でも、私がこの時、何も出来なかったという事実は変わらない。

せめてもの罪滅ぼしにと、私は生徒会に入った。

心に深い傷を負った歳納京子を守るため、船見さんが歳納京子と2人で作った『ごらく部』を守るためだ。

自分に歳納京子の側に居る資格なんか無いと考えた私は、離れた場所で2人を見守る事にしたのだ。

でも…。



199: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:26:13.80 ID:+CTp9RkZo
綾乃「私はずっと、この光景を見ては悔やんできた」

もしあそこで、歳納京子を救えたなら…。

いじめをやめさせる事が出来たなら…。

何度もそんな事を考えた。

やり直しを願った。

そんな私に、神様がくれたチャンス、それが『試練』だった。

『試練』を一つ乗り越える度に、この光景の中で一歩ずつ歳納京子の元へ近づく事が出来た。

でも…。



200: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:27:53.60 ID:+CTp9RkZo

トンッ…。

最後の一歩を踏み出しても、まだまだ歳納京子の元へは届かない事を知る。

綾乃(やっぱり、ズルは出来ないのね…)

過去は変えられない。

今までの『試練』はきっと、この後悔を忘れないようにさせるための『戒め』だったのだろう。

やっぱり、私は臆病なまま。

歳納京子の側には、船見さんが…。




??『あなたの武器は『足』だけですか?杉浦綾乃…」

綾乃「…!?」

聞き覚えのある声がした。



201: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:29:23.63 ID:+CTp9RkZo
??『その『口』は、一体何のために付いているのですか?』

綾乃「くち…」

??『足で届かないなら、叫べばいいでしょう。叫べば届く距離に来る為に、『試練』はあったのですよ』

綾乃「叫べば…届く…」

??『今なら届く筈です、あなたの声が、想いが…』

綾乃「私の…想い…」



202: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:29:53.91 ID:+CTp9RkZo
『杉浦先輩、京子ちゃんの事、よろしくお願いします』

…赤座さんのどこまでも真っ直ぐな瞳を思い出す。


『杉浦先輩、絶対京子先輩と幸せになってくださいね!!』

…少し計算高くて、それでもやっぱり優しさのこもった吉川さんの声を思い出す。


『ちょっと杉浦先輩!何暗い顔してるんですか!』

『ひとまず試練を終えたのですから、もう少し喜んでもいいのではないかと…』

…私と同じでいつも素直になれない、可愛い2人の後輩の顔を思い出す。



203: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:30:19.70 ID:+CTp9RkZo
『そうか。杉浦なりに何かを掴んだようだな』

『女の子同士で付き合うのは、何も悪いことばかりではない。楽しいこともきっと沢山ある。だから頑張って…』

…私に行き先を、未来を示してくれた、会長と西垣先生の行き方を思い出す。



『綾乃ちゃんのシアワセが、うちのシアワセやから』

…誰よりも私の幸せを願ってくれる、一番の親友の笑顔を思い出す。


『だったら代えてみせてよ。その過去を…。後悔を…』

…ずっと歳納京子の事を守ってくれたその人の、真剣な眼差しを思い出す。



204: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:30:46.15 ID:+CTp9RkZo
そうか、『試練』はただの通過儀礼じゃないんだ。

私はたくさんの人たちから、勇気と強さを貰ったんだ。

それを、今使わないでどうする?

綾乃(待ってなさいよ、歳納京子…!)

ありったけの力を込め、歳納京子に届けとの想いを込め…。

綾乃「――――――――!―――――――――っ!!!」

私は、力強く叫んだ。



205: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:31:11.48 ID:+CTp9RkZo




綾乃「ちょっとあなた達!いい加減にしなさいっ!!!」







206: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:31:40.80 ID:+CTp9RkZo
…。

辺り一面に響き渡るその声に、教室中が静まり返った。

結衣「杉浦…さん…」

綾乃「さっきから黙っていれば何なの!?中学生にもなっていじめとか、恥ずかしくないの!?」

女子A「ちっ、何だよコイツ…!」

綾乃「そんな行為は、この学級委員、杉浦綾乃が許さないわよ!!!」

京子「あやのぉ…」

綾乃「歳納さん、船見さん、今まで力になれなくてごめんなさい…。もう大丈夫だから」

杉浦さんが…、私達に見方してくれてる…?

綾乃「千歳!!千歳ももちろん協力してくれるわよね!?」

千歳「…もちろんやで綾乃ちゃん。ふふっ、最近ずっと元気無かったけど、今の綾乃ちゃん、イキイキしとるわぁ♪」



207: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:32:30.50 ID:+CTp9RkZo
綾乃「みんなも、いつまでこんな人達の言いなりになってるのよ!?この中に、本当に歳納さんの事を嫌いな人なんていないでしょう?」

モブ「…うん、私今までどうかしてた。今更謝っても許してもらえないと思うけど、歳納さん、船見さん、今までゴメン…」ペコリ

モブ2「…私も、ごめんなさい」ペコリ

結衣「みんな…」

すごい…。
杉浦さんの一声で、クラス中の皆が私達の仲間になった。
すごいよ、杉浦さん。

女子A「うっ…」

綾乃「さあもう観念しなさい。今日の事はしっかりと先生方に報告させてもらうんだからね!このクラス全員が証人よ!」

女子A「うぅ…」



208: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:33:01.88 ID:+CTp9RkZo
綾乃「いい?もし次こんな事したら…」

綾乃「…罰金バッキンガムよ!!!」

結衣「ぶっ…!!」

体中ボロボロで、ろくに動かす元気もない筈なのに、何故かその場違いなダジャレに笑ってしまった。


こうして、京子と私へのいじめは終わった…。



209: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:33:38.97 ID:+CTp9RkZo
…。

綾乃のおかげで、いじめの主犯格だった3人は停学処分になり、私の学校生活にも平和が戻ってきた。
そうそう、これをきっかけに綾乃と仲良くなった私は、彼女を下の名前で呼ぶようになった。

綾乃「船見さん、はいこれ、歳納京子のプリント」

相変わらず、綾乃の方は私を苗字で呼ぶけれど…。

結衣「いつもありがとうね」

綾乃「いいのよ。それより、歳納京子はまだ…」

結衣「うん…」

あの事件をきっかけに、京子は他人とまともに接することが出来なくなった。
家族と私以外の人間には、ろくに口も聞こうとしない。
他人と接することを極端に恐れているので、当然学校にも来ない。
いわゆる、『登校拒否』になってしまった…。



210: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:34:06.70 ID:+CTp9RkZo
綾乃「ごめんなさい…。私がもっと早く力になれていれば…」

結衣「綾乃のせいじゃないよ。何も出来なかったのは私も同じ…」

むしろ、綾乃には感謝してもし切れない。

綾乃「今日も行くの?その…、歳納京子の所に…」

結衣「うん」

綾乃「じゃあ伝えてちょうだい。もし学校へ戻ってきてくれたら、その時は仲良くしましょうって」

結衣「うん。きっと京子も喜ぶよ」



211: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:34:50.64 ID:+CTp9RkZo
~京子の家~

ピンポーン

京子母「あら結衣ちゃん。今日も来てくれたのね。さ、あがって」

結衣「はい。あの、京子は…?」

京子母「今日も部屋に居ると思うわ。会ってあげてくれるかしら?」

結衣「はい。もちろんです」

…。

ガチャ

結衣「や、京子」

京子「ゆい…?」

結衣「今日は何してたの?」

京子「えっとね…、ミラクるんよんでた…!」

結衣「そっか…」



212: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:35:21.37 ID:+CTp9RkZo
京子「ゆいは、なにしてたの?」

結衣「私は…学校だよ」ニコッ

京子「がっこう…?」

京子「がっこう…、やだ…、こわい…」

結衣「京子?」

京子「やだよぉ…、ゆいぃ…、こわいよぉ…」

結衣「大丈夫だよ京子、怖くない」ナデナデ



213: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:36:21.87 ID:+CTp9RkZo
京子「ゆい…、いかないで…。ひとりにしないでぇ…」

結衣「どこにも行かないよ。ずっと京子の側にいる」ナデナデ

京子「えへへ…」

結衣「…」

京子は、完全に壊れてしまった。
中学に上がったのを期に、明るくなった筈の京子は、再び泣き虫でか弱い女の子だった頃に戻ってしまった。
精神年齢も、小学生くらいに戻ってしまった様な気がする。

結衣「ずっと、側に居るからな…」

だから守らなくちゃいけない。
私と綾乃で、この弱くて、今にも壊れてしまいそうな女の子を…。



214: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:36:48.18 ID:+CTp9RkZo
結衣「そういえばさ、綾乃が京子に会いたがってたよ」

京子「あやのが…?ほんと?」パァァ

京子は、綾乃の話をすると目を輝かせる。
私達を救ってくれた綾乃は、京子の中できっとヒーローのような、憧れの存在なのだろう。

結衣「だから、京子も頑張らなくっちゃね」

京子「…うん!」

とは言うものの、どうしたら京子は学校に復帰できるのだろうか…?

結衣(あ、そういえば…)

とある日の京子との会話を思い出す。



215: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:37:15.29 ID:+CTp9RkZo
~回想~

京子『それにしても、私たちこんなことしてていいのかなぁ?』

結衣『どうしたんだよ急に…』

京子『いやー、だって私たちって中学生じゃん?青春真っ盛りなこの時期に、部活にも入らずダラダラしてても良いものかと…』

結衣『…確かに』



216: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:37:56.74 ID:+CTp9RkZo
結衣「そうだ、部活…!京子、私達で部活をやろう!」

京子「ぶかつ…?」

結衣「うん。ここに新しい部活を作るんだ!」

言ってることが滅茶苦茶だと自分でも思ったけど、京子が学校に行けるようになる事に少しでも繋がればと思った。

結衣「…今の京子はろくに外出も出来ないし、となるとこの部屋で出来ることがいいな。それでいて今の京子でも出来るような簡単な…」ブツブツ

京子「ゆ、ゆい…?どうしたの?」

結衣「2人で楽しいことだけをする部活…。『ごらく部』なんてどうだ?」

京子「ごらくぶ…?」



217: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:38:35.36 ID:+CTp9RkZo
結衣「そう、ごらく部!部長は京子!」

京子「ぶちょう…?」

結衣「京子が部長だから、活動内容は京子が決めるんだ。京子がしたいこと、何でもしていいんだよ」

京子「なんでも…?えっとねー、じゃあ…」

ガサゴソ

京子が本棚から何かを引っ張り出してくる!」

京子「きょうの、ぶかつは、ミラクるんをよみます…!」

結衣「ははっ、京子らしいな」



218: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:39:15.70 ID:+CTp9RkZo
…。

京子「…」シュウチュウ

結衣「…」

京子がミラクるんに集中している間、私は鞄から一冊のノートを取り出す。

結衣(活動日誌をつけよう。少しでも部活っぽくするために…)

私は、ノートに今日の日付と活動内容を書いた。

『ごらく部活動日誌 初日 ミラクるんを読んだ』

こうして、京子の部屋で、私と京子の2人だけの部活動が始まった。



219: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:39:57.74 ID:+CTp9RkZo
…。

翌日。

京子「きょうはなにするの…?」

結衣「そうだなぁ。なもクエでもする?」

テレビの電源を入れ、ゲーム機をセットする。

京子「やった…!ゆいとなもクエ!!」

結衣「ちゃんとレベル上げするんだよ」

京子「はーい」

京子が必死に経験地を貯めている間に、私は今日の活動日誌を書く。

『ごらく部活動日誌 二日目 なもクエをやった』



220: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:40:33.98 ID:+CTp9RkZo
…。

数日後。

結衣「もうゲームも漫画も飽きたね」

京子「うん…」

いよいよ遊びのネタが尽きてしまった。
そもそも、普通に考えればごらく部なんて訳のわからない部活が長続きするわけがない。

結衣「何か新しい遊びを考えよう。そうだな…」

私は京子の部屋に置いてあった適当な空き箱を持ってくる。

京子「なにするの…?」

結衣「まあ見てなって」



221: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:41:02.70 ID:+CTp9RkZo
私はその箱の側面に、マジックで『話題BOX』と書く。

結衣「はいできた!話題BOX」

京子「わだいぼっくす…?」

結衣「紙に何か適当な話題を書いてこの中に入れて、それを引く。出た内容について色々お喋りするんだ」

京子「…わぁぁ!何だか楽しそう!」パァァァ

京子は早速、張り切って紙に色んな話題を書いていった。

『ごらく部活動日誌 五日目 話題BOXを作った』



222: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:41:59.74 ID:+CTp9RkZo
…。

そんな感じで、私は必死に知恵を絞って色んな遊びを考えていった。
最初は私の提案を聞くだけだった京子も、次第に積極的に遊びを提案してくるようになり、少しずつ部活らしくなってきた。


そんなある日、私は一つの提案を綾乃に持ちかけた。

綾乃「部活動登校!?」

結衣「うん。よく『保健室登校』とかってあるだろ?そんな感じで、授業には出ないけど、部活動だけ参加とか出来ないかな?」

ごらく部の活動を学校内でやれば、必然的に京子が学校に来られるようになる。
授業はまだ無理にしても、私と2人きりなら京子も学校に居られるのではないか、そう考えてのものだった。

綾乃「とりあえず先生に相談してみるけど…。それで、どの部活に入るの?」

結衣「えっと…、ごらく部…?」

綾乃「…え?」

結衣「私と京子で作った新しい部活」



223: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:42:31.81 ID:+CTp9RkZo
綾乃「え?え?」

綾乃が目を白黒させている。
無理も無い反応だ。

結衣「京子にはまだ普通の部活は無理かなって思って、京子でも出来る部活を考えてみたんだ」

綾乃「…」

結衣「無理なお願いを言ってるのはわかってるけど、綾乃にしか頼めない事なんだ!」

綾乃「…わかったわ。何とかやってみる。でもあまり期待しないでね…」

結衣「ありがとう!」

綾乃の好意が、身に沁みるようだった。



224: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:43:04.57 ID:+CTp9RkZo
…。

数日後。

綾乃「ごめんなさい…」

結衣「ううん。綾乃のせいじゃないよ」

当然ながら、そんな無茶な要求は通らなかった。

綾乃「でもまだ諦めないわ!どんな手段を使ってでも『ごらく部』を作ってみせる!ファイトファイトファイファイビーチよ!!」

結衣「ぶっ…!!」

千歳「綾乃ちゃん、燃えとるなぁ~♪あ、ウチも色々手伝わしてもらうわぁ」

結衣「2人とも、本当にありがとう…」

私は本当に素敵な友達に恵まれた。
京子も早く学校に来いよ、こんな良い友達が待ってるんだから…。



225: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:43:40.09 ID:+CTp9RkZo
…。

それからしばらくして、綾乃と千歳が生徒会に入ったという話を聞いた。

結衣(まさかとは思うけど…)


そして更に数日後、私は綾乃に、学校のとある場所へと呼び出された。

結衣「ここは…?」

綾乃「旧茶道部の部室よ!今はもう使われていないのだけれど…。それと…」

綾乃「船見さん、おめでとう。『ごらく部』が部活動として学校側から認可されたわ。それと、歳納京子の『部活動登校』も…」

結衣「え…?」



226: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:44:14.50 ID:+CTp9RkZo
綾乃「そしてこの茶道室が、今日から新しい『ごらく部』の部室よ!」フフン

綾乃は、勝ち誇った顔でそう言った。

結衣「綾乃…」

気づけば、私の頬を涙が伝い落ちていた。

結衣「綾乃っ…!本当にありがとう!!」ダキッ

綾乃「ちょ、ちょっと船見さん…///」

思わず、綾乃に抱きついてしまう。

結衣「綾乃…、本当にありがとう。生徒会に入ってまで『ごらく部』を認めさせてくれたんだよね?」

綾乃「べっ、別にあなた達の為じゃないわよ!!ちょうど私も帰宅部だったし、もともと生徒会に入りたかっただけで…」

結衣「うん…ありがとう…」グスン



227: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:45:22.21 ID:+CTp9RkZo
綾乃「…船見さん、今までずっとお疲れ様。歳納京子も喜んでくれるといいわね」

結衣「きっと…、喜んでくれるよ」

私一人の力では、きっとここまで出来なかった。
綾乃が…、綾乃が居てくれたから…。

結衣「綾乃もさ、ごらく部に入らないか…?」

綾乃「え!?わ、私は遠慮しておくわ…///もう生徒会入っちゃったし、それに…」

綾乃「歳納京子の側にいてあげるのは、船見さん、あなたの役目。私は遠くから見守ってるわ」

結衣「綾乃…」

綾乃は残念ながら部員にはならなかったけど、この部活は、ごらく部は、私と京子と綾乃の3人で作り上げた部活。
心にそう、深く刻み込んだ。


『ごらく部活動日誌 40日目 新しい部室が出来た』



228: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:45:57.21 ID:+CTp9RkZo
~茶道室(ごらく部・部室)~

京子「わぁー…!!」

新しい部室に京子を連れてきた。

京子「すごい!すごいよ結衣!ここが部室…!」

京子は目をキラキラさせながら、落ち着き無く辺りを見渡している。

結衣「そうだぞ京子。今日からここを自由につかっていいんだ」

京子「…ホント?結衣すごい!」

最近、京子の様子に少し変化が見られるようになった。
以前に比べ、だいぶ歳相応の喋り方が出来るようになってきたのだ。

京子「見て見て結衣!掛け軸がある!」



229: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:46:34.73 ID:+CTp9RkZo
結衣「ホントだ。でも何も文字が書いてないな…」

京子「そうだね。じゃあ、新しい部室での初日の活動は、ここに文字を書くことにしようよ!」

今日の活動内容も、京子の方から提案してくれる。
いい傾向だった。

結衣「そうだな。で、何て書くんだ?」

京子「それはもちろん…」

京子が習字セットを取りだし、おもむろに掛け軸に文字を書いていく。

京子「じゃーん!!」

『ミラクるん』

結衣(やっぱり…)

新しい部室に、京子も大満足のようだった。


『ごらく部活動日誌 41日目 掛け軸の文字を書いた』



230: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:47:31.73 ID:+CTp9RkZo
…。

それから、京子は『部活動登校』を続けながら、次第に明るさを取り戻していった。
他の生徒とはまだ無理だけど、綾乃には何度か遊びに来てもらい、会話もした。

綾乃「部室の無断使用は、罰金バッキンガムよ!!」

京子「あはは!ツンデレだ~♪」

私達が部室を無断使用しているのを注意する、という設定でしか来れないそうだ。
素直じゃない所が何とも綾乃らしい。

京子「ねえねえ、綾乃も『ごらく部』に入りなよ~」

綾乃「ななな何言ってんのよ!!///」

京子は、そんな綾乃を怖がる事はなかった。
綾乃は絶対的に私達の味方だ、という事を本能レベルで悟っているのだろう。
だって綾乃は、京子にとってのヒーローそのものだから。

そんな、ある日の事だった…。



231: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:47:57.50 ID:+CTp9RkZo
京子「ねえ結衣、ごらく部っていつまでも2人だけのままなのかな?」

結衣「どうしたんだ、急に」

京子「いやぁ、やっぱり2人きりは寂しいなぁって…」

結衣「そうだな…」

やっぱり、このままじゃダメだ。
そろそろ京子も、外の世界に触れるべきだ。

結衣「じゃあさ、クラスの人とか誘って…」

京子「それはイヤ…!!」

京子が、はっきりとした拒絶を示す。

京子「結衣や綾乃が私の為に頑張ってくれてるのは知ってる。でもゴメン…、やっぱりまだ…」



232: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:48:35.79 ID:+CTp9RkZo
京子の体が震えていた。
やはりまだ、私や綾乃以外のクラスメートと話すのは怖いみたいだった。

結衣「いいよ、京子…。無理させてごめんな…」ナデナデ

でもそうなると、新しい部員は誰にすれば…。

結衣「あっ…!」

その時、私の頭の中に、2つの赤いお団子の女の子が浮かんできた。

結衣「あかり…とかどうかな?」

京子「あかりちゃん…?」

結衣「うん。あかりも来年にはこの学校に来るし、そしたら3人目の部員をあかりにしよう!」

京子「うん!私もそれがいい!」



233: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:49:12.23 ID:+CTp9RkZo
京子「あとねー、もっと沢山部員が欲しいなぁ…」

結衣「例えば?」

京子「んとねー、ミラクるんにそっくりの女の子とか!」

結衣「ははは、それは難しいだろうねぇ…」

でももしかしたら、新入生にそんな子がいるかもしれない。
天文学的な確立だろうけど…。

結衣「じゃああかりが来るまでに、京子もがんばらないとな!」

京子「うん…」

結衣「先輩が授業に出てないなんて、恥ずかしいぞー」

京子「わかってるてばぁ…」

待ってろあかり。
あかりが来るまで、京子とごらく部は、私と綾乃が守るから…。


『ごらく部活動日誌 70日目 あかりを3人目の部員として迎え入れる事に決まった』



234: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:49:40.95 ID:HuQCjTE5o
世界線変わったからごらく部結成の設定も変わったのか



235: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:50:09.48 ID:+CTp9RkZo
~終わる世界~

この世界は、本当の世界ではない。

弱虫で、意地っ張りで、素直になれない、そんな女の子が成長する為に作られた世界。

私はどこかでその事に気づいていた。

そしてきっと京子も…。

だから、この世界はもうすぐ終わる。

悲しくないと言ったら嘘になるけど、でも大丈夫。

どこか遠くの世界に居る、『本当の私と京子』が、きっと上手くやってくれるから。

だからこの世界はもう、終わらなければいけない。



237: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:52:19.28 ID:+CTp9RkZo
京子「結衣、あのね。話があるんだ…」

京子「私、もう一度頑張ってみる」

京子「ちゃんと学校に行って、授業受けて、皆と楽しく過ごすよ」

結衣「京子…」

それは突然の告白だった。

結衣「もう…大丈夫なの…?」

京子「うん。あのね、結衣…」ギュッ



238: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:52:51.02 ID:+CTp9RkZo




京子「今までずっとありがとう」







239: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:53:30.82 ID:+CTp9RkZo
突如、何かが崩れ落ちる音がした。

京子の学校生活への復帰が、『終わり』への合図だったんだ。

この世界が…、終わろうとしている。

京子「いつも私の側に居てくれてありがとうね…」

私達の周りを、8つの光が踊るように回っている。

京子「小さい頃からずっと、結衣は側に居てくれたよね」

あかり、ちなつちゃん、大室さん、古谷さん、会長、西垣先生、千歳。
先に旅立っていった、7人の『番人』達。

京子「思えばさ、色んな事をしてきたよね」

その7つの光は、私立ちの『旅立ち』を祝福してくれているようだった。



240: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:54:08.18 ID:+CTp9RkZo
京子「漫画読んだり、ゲームしたり、変な遊び考えたり…」

結衣「そうだな。最初の部室は京子の部屋だったもんな」

京子「へへっ、今考えるとおかしいね」

結衣「むっ、私なりに必死に考えたんだぞ!」

京子「うん、わかってる。結衣はいつも私の為にがんばってくれた」ギュッ

私を抱きしめる京子の手に、一層力がこもる。

京子「この世界も私達も、もう終わっちゃうんだよね…?」

結衣「そうだな…」

京子「ねえ結衣、この世界の『私たち』に、意味はあったのかな?」

結衣「あったさ、きっと…」



241: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:55:00.83 ID:+CTp9RkZo
京子「本当の世界でも、結衣はずっと私の側に居てくれるよね…?」

結衣「うん。ずっと側に居るよ…」

例え京子が綾乃の事を好きでも、2人が付き合う事になったとしても、私は京子の側に居続ける。
それがどんな世界でも。
だって私は京子の…

結衣「幼馴染、だからな」

京子「うん、結衣。ずっと『ごらく部』で楽しい事しようね」

世界が光に包まれる。
私たちは、あと数秒でその光と同化して、消える。

結衣「うん、京子――――いつまでも―――――」

京子「…」

結衣「…」

そして私たちは、本当の世界へ向けて旅立った。

弱虫で、意地っ張りで、素直になれない、そんな不器用な女の子の力になる為に…。



242: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:55:28.87 ID:+CTp9RkZo




『ごらく部活動日誌 82日目 ずっと…京子と…』







244: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:56:19.08 ID:+CTp9RkZo
…。

綾乃「ただいま…、船見さん」

結衣「おかえり、綾乃」

試練を終えた私は、再び『番人』のいるこの場所へ戻された。

綾乃「これで…よかったのよね…」

結衣「…きっとね」

ギュッ

船見さんが私を抱きしめてくる。

結衣「今までお疲れ様、綾乃。よく頑張ったね…」

綾乃「船見さん…、私…、私ぃ…!」



245: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:56:59.29 ID:+CTp9RkZo
気がつけば私はまた泣いていた。
今までの試練の中で、私は何度泣いただろう。

綾乃「うっ…、うわあああんっ…!!」

結衣「よしよし、本当に凄いよ綾乃は」

もう何が悲しいのかさえわからない。
これまでの試練の事が頭に浮かんでは消え、さまざまな想いが込みあえげてくる。
そして、堪えきれなくなったものが、次から次へと、涙となって溢れてくるのだ。

綾乃「船見さん…、ごめんなさいっ…!でも私、どうしてもあなたに言わなくちゃいけないのっ…!」ポロポロ

結衣「うん…。聞くよ、綾乃…。だから頑張って…」

綾乃「わたしはぁっ…、ずっと歳納京子を守ってきたあなたからっ…歳納京子を…奪って行きます…!ごめんなさいっ…!」ポロポロ

結衣「うん、それでいいんだよ…」

船見さんは、いつもと同じように穏やかな顔で、私の頭を何度も撫でてくれる。



246: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:57:39.74 ID:+CTp9RkZo
綾乃「船見さんはっ…、ずっと歳納京子の側で守ってきたのにっ…!私はっ…」

結衣「京子を守ってくれたのは、綾乃も同じだよ」

綾乃「船見さん…」

結衣「だからもう、泣き止んでよ」

綾乃「うん…」

涙を拭い、船見さんの肩をそっと抱き返す。

綾乃「船見さん、これからもずっとお友達でいてくれる…?」

結衣「当たり前だろ」




綾乃「…船見さん、私、強くなるから!歳納京子の事、絶対に守りぬくから!」

結衣「ありがとう。綾乃…」




結衣「京子と…、そして『本当の私』を、よろしくね」



247: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:58:28.84 ID:+CTp9RkZo
~試練の間~

??『お疲れ様でした。本当に、良く頑張りましたね』

綾乃「…ええ。あなたには結局助けられたわね」

??『いえいえ、それは貴方自身の強さですよ』

綾乃「そうだといいのだけれど…」

何はともあれ、私は全ての試練を終えたのだ。

??『ようやくこれで全ての試練を終えましたね。と、言いたいところですが…』

??『実はもう一つ、とても大変な試練が残っています』

綾乃「え!?」



248: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:59:17.08 ID:+CTp9RkZo
??『その試練は、ここではなく、貴方の『元いた世界』で行っていただきます』

その瞬間、私の周りを9個の光の玉が覆った。

??『この試練は大変ですよ。下手をすれば一生涯かかるかもしれませんね』

その光に包まれ、私の体は急速に遠くへと飛ばされていく。

??『それでは、本当に最後の試練の内容をお伝えします』

意識が加速し、元の世界へと戻ろうとする中、その声だけがずっと頭の中に響き続けた。




??『歳納京子と、幸せになってください。ずっと…』



249: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 22:59:42.83 ID:+CTp9RkZo
~生徒会室~

??「…ゃの!綾乃!!」

綾乃「…ん」

歳納京子の声で目を覚ます。

京子「綾乃!良かった…」

綾乃(ここは…、生徒会室…!) 

どうやら無事に、元の世界に戻って来れたらしい。

京子「急に倒れたりなんかして、本当に心配したんだから…!」

綾乃「…」



250: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 23:00:08.56 ID:+CTp9RkZo

そうか、私…、歳納京子に告白したのよね。
それで…。

綾乃「何だか不思議な感覚。ずっと長い間旅をしてきたみたいな…」

京子「え…?」

綾乃「歳納京子、私ね、不思議な夢を見ていたの」

綾乃「その夢の中で、私は赤座さんとか吉川さんとか、色々な人になりきって、沢山の試練をこなしていくの…」

京子「…」

綾乃「変よね、私。でも…」

京子「綾乃…」ギュッ



251: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 23:00:43.62 ID:+CTp9RkZo
綾乃「えっ…?」

京子「よくわからないけど、頑張ったんだね、綾乃は…」

急に抱きしめられ、私の心臓が高鳴る。

京子「おかえり、綾乃…」

綾乃「…ただいま、歳納京子」

歳納京子の体温が伝わってきて、歳納京子の心臓の鼓動は、物凄く早くて…。

綾乃(歳納京子も、ドキドキしてくれてるんだ…)

京子「それでさ、綾乃。さっきの話なんだけど…///」

綾乃「あ///」



252: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 23:01:33.20 ID:+CTp9RkZo
そうだ。
ここの世界ではきっと、さっき告白したばかり。
でも…。

綾乃(不思議ね。試練をこなす前に比べると、ずっと落ち着いてる…)

最初の時よりもずっと穏やかな気持ちで、私は言った。

綾乃「好きよ、歳納京子…。あなたの事が好き…。愛しているの…」

京子「私も…」

京子「私もっ…、綾乃が好きっ…、大好きっ…!!」グスン

綾乃「ちょ、ちょっと歳納京子…!?どうして泣くのよ!」アワアワ

京子「だって…、嬉しくて…」



253: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 23:02:10.13 ID:+CTp9RkZo
京子「私は…、ずっと綾乃の事が好きだったのに…。綾乃はいつも怒ってばかりで…、私の事嫌いなんじゃないかって…」

綾乃「…馬鹿ね」

歳納京子の涙を、そっと指で掬う。

綾乃「素直になれなかったの。あなたの事が好きなのに…。私は弱虫で意地っ張りだから…」

でも、ようやく伝えられた。
ついに、歳納京子と結ばれる…。

綾乃(でもその前に、一つだけ確認しなきゃ…)

私は、意を決して一つの質問をする。



254: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 23:02:51.39 ID:+CTp9RkZo
綾乃「歳納京子は、どうして私の事を好きになってくれたの…?」

京子「…うん。昔ね、中学1年の時、私がいじめられてた事あったでしょ?あの時綾乃が守ってくれて、凄く嬉しかった」

綾乃「…」

京子「その時から、ずっと私は綾乃に憧れてた。生徒会に入って、副会長で、一生懸命頑張ってて…」

綾乃「歳納京子、あのね…」

やっぱり、あの過去は変えられているみたいだった。
私は、このまま何事も無かったかのように歳納京子と結ばれてしまうのは、いけないと思った。
自己満足かもしれない。
それでも、私の好きな人に、『真実』を伝えたかった。

綾乃「聞いて欲しいことがあるの…。信じて貰えないかもしれないけど…」



255: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 23:03:30.72 ID:+CTp9RkZo
…。

それから、私は歳納京子に『試練』の内容を全て話した。
歳納京子がいじめられている時、本当は何も出来なかった事。
その罪滅ぼしとして、『ごらく部』を守る為に生徒会に入ったという事。
『試練』の中で、その過去を変えたという事。

京子「…」

綾乃「幻滅したわよね…。本当の私は凄く弱虫で、あなたが思っているような存在なんかじゃ…」

京子「…綾乃!」

チュッ

綾乃「え…?」

今、歳納京子の唇が私に…。

綾乃(ききききキスされたぁあああ!?///)



256: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 23:05:41.17 ID:+CTp9RkZo
京子「綾乃のバカ…!そんな事で嫌いになったりなんかしない!」

綾乃「とっ、歳納京子…」

京子「そもそも綾乃は勘違いしてるよ。その教室でいじめを止めたっていうのは、『きっかけ』に過ぎないでしょ?」

綾乃「きっかけ…」

京子「過去を変える前の世界でも、綾乃は生徒会に入って『ごらく部』を守ってくれたじゃん!私は…」

京子「私は、遠くからいつも私の事を守ってくれてたから、綾乃を好きになったの!!」

綾乃「…っ!!」



257: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 23:06:09.29 ID:+CTp9RkZo
京子「ねえ綾乃、並行世界って知ってる?」

綾乃「…何かしら?」

京子「この前のミラクるんに出てきたんだけどね…」

京子「今ここに居る私たち以外にも、無数の世界があって、そこでは『この世界』では起こらないような色々な可能性があるんだって」

京子「で、もしかしたらその並行世界の中に、今言ったみたいな弱虫な綾乃の世界があったのかもしれない。でもね…」

京子「どんな世界でも、私は綾乃の事を好きになっていたと思うんだ」

綾乃「としのう…きょうこ…!」

そんな言葉、言われたら嬉しすぎて、まだ涙が出てきてしまう。



258: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 23:06:49.61 ID:+CTp9RkZo
京子「それにね、もし最初の綾乃が弱虫だったとしても、私の為に幾つもの大変な試練を乗り越えて、過去を変えてくれたんでしょ…?」

京子「そんな事されたら…、どっちみち好きになっちゃうに決まってるよ///」

綾乃「そんな…私…」グスン

京子「へへ、やっぱり綾乃は私のヒーローだ!」ダキッ

綾乃「…ええ、あなたはずっと私が守るわ!」

京子「綾乃…、もう一回キスしてもいい?」

綾乃「待って、今度は私から…」

チュッ



259: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 23:07:18.80 ID:+CTp9RkZo
京子「あやのっ…///すきっ…!だいすきっ!」

チュッ

綾乃「わたしもだいすきよっ…!としのう…きょうこ…///」

チュッ

私たちは、これまで貯まっていたものが噴出すかの如く、何度も何度も唇を重ねた。



260: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 23:07:48.78 ID:+CTp9RkZo
京子「綾乃!私、今すっごく幸せだよ」

綾乃「ええ、私も幸せ」

七つ目の試練がようやく始まろうとしていた。
もしかしたらこれは本当に、一生涯かけても終わらないかもしれない。
でも、終わらない方が幸せなのかも…。
だって…。




綾乃「歳納京子と、ずっと一緒に居られるもの」



261: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 23:08:39.18 ID:+CTp9RkZo
~生徒会室・入り口前~

櫻子「わー!すげー!杉浦先輩すげー!」

向日葵「ちょっと櫻子!声が大きいですわよ!」

千歳「こっ…、これぞ我が至福の光景…たまらんわぁぁぁあ!!!」ブッシャー

奈々「なるほど…。今度はあの2人セットで実験してみるか」

りせ「…………」

ちなつ「すっ、凄い…!私もいつかは結衣先輩と…!」ギラギラ

あかり「ちょっとぉ!あかり見切れちゃってるよぉ!!」アッカリーン

結衣「ははは…」

京子と綾乃が結ばれる瞬間を、私達はしっかりと目撃してしまった。

結衣(目撃というより、完全に覗き見だけど…)



262: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 23:09:53.54 ID:+CTp9RkZo
結衣「そういえばさ、時間にしてほんの数秒だったけど、不思議な夢を見た気がするんだ」

千歳「奇遇やなぁ。ウチもやで」

櫻子「あれ、そういえば私も何か見たような…」ハテー

向日葵「櫻子の記憶力なんて期待できませんわ!でも、わたくしも見たような気は…」

奈々「杉浦は相変わらず実験には否定的だった…」

りせ「…………」

ちなつ「あー、確かに見ましたね。でもあれは夢っていうより…」

あかり「あかりも見たよぉ!」

なんだ、みんな同じものを見てたのか。
それで、結果を見届けたくなってここに集まったという事か。



263: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 23:10:22.78 ID:+CTp9RkZo
櫻子「あっ、先輩たちこっちに来るよ!」

向日葵「どこかに隠れないと…」

ちなつ「うーん、でももういいんじゃない?堂々としてれば」

千歳「みんなで祝福すればええんやないかな?」

結衣「おっ、それいいね!」

ガチャッ

京子「あれ、みんな…。どうしてここに…?」



264: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 23:10:51.75 ID:+CTp9RkZo
櫻子「歳納先輩、杉浦先輩、おめでとうございます!」

向日葵「本当におめでたいですわ」

千歳「やったなぁ!綾乃ちゃん!」

奈々「結婚式は、今流行りの『爆発婚』とかどうだ?」

りせ「………」

ちなつ「杉浦先輩!私もすぐに結衣先輩と…!」

あかり「よかったぁ…。本当に良かったよぉ!」

結衣「京子、綾乃、おめでとう」




綾乃「…」

京子「…」

綾乃「…」




綾乃「どうしてみんな知ってるのよぉぉぉぉ!!!」



266: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 23:11:25.15 ID:+CTp9RkZo
…。

その後、みんなにひとしきり弄られた後、ぐったりしている京子と綾乃に声をかける。

結衣「ちょっとさ、2人にお願いがあるんだけどいいかな?」

京子&綾乃「…?」

京子と綾乃を、ごらく部の部室まで連れてくる。

結衣「写真をさ、撮りたいなって思って。2人の交際の記念撮影」

京子「お!いいねぇ!」

結衣「それでさ…、その…厚かましいお願いだとは思うんだけど…」

綾乃「じゃあ船見さんはここね」トントン



267: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 23:12:28.77 ID:+CTp9RkZo
結衣「え…?」

綾乃が指差したのは、京子と綾乃の間の空間だった。

綾乃「3人で撮りましょう。記念なんだし」

結衣「綾乃…」

私のやりたかった事を、綾乃はすぐに理解してくれた。
その思いやりに、胸が温かくなる…。


結衣「じゃ、撮るよ」

右手に持ったカメラを私たちの方へ向け、何とか自撮り出来るようにする。
このやり方だと、現像したときにブレてるかもしれないけど、そこは気にしないでおこう。
並び方は、左から京子、私、綾乃の順だ。



268: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 23:13:41.22 ID:+CTp9RkZo
パシャッ

京子「あー、目瞑っちゃったー!!結衣、もう一回!!」

綾乃「もう、何やってるのよ!!」

結衣「はいはい、もう一回ね」

パシャッ

京子「あ、また目閉じちゃった…」テヘ

綾乃「歳納京子ー!!いい加減にしなさいよね!!」

この2人は、カップルになっても相変わらずだなぁ…。

結衣「ほら2人とも!付き合って早々喧嘩するなー!」



後日、私はこの写真を活動日誌に貼り付けた。




『ごらく部活動日誌 256日目 ごらく部創立者3人で』



-fin-



269: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 23:14:51.46 ID:HuQCjTE5o



278: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 23:29:25.46 ID:iLpfj6gDO
感動したよ
すっごくよかった!



282: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/12(日) 17:13:28.10 ID:KGrz3/fAO
おつおつ!
綾乃も強くなれたんだな



270: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 23:15:01.31 ID:Gv2WjgrIO
おつ!



272: 以下、VIPにかわりましてゆる速がお送りします 2012/08/09(木) 23:15:57.38 ID:UP2LdG0b0
乙!
感動した!



http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1344495219/

ALL-2ch
1001: 以下、名無しにかわりましてゆる速がお送りします 2014/07/24(木) 21:43:32.94 ID:yuruyuri0
コメント
300 : 2015/11/26 19:05
素晴らしい
コメントの投稿








上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。